Epilogue

Epilogue——暗号編——

 少女は自宅につくなり「ただいまー!」と叫びながら靴を脱ぎ散らかし、一秒でも早くといった様子で自室に飛び込んだ。カバンをベッドに放り投げ、着替えもせずに机に向かう。青年に渡された封筒をペーパーナイフで丁寧に開封し中身を見ると、一枚の便箋が入っていた。

 その便箋には青年からの暗号が書かれていた。



  この前のなぞなぞの返事です。

  すこしあたまをつかえばわかるよ。


  細い枝垂れ柳シダレヤナギの右には

  てっぺんを刈り取られた松

  その松の右上には

  小さな銀杏イチョウがのっている

  クヌギを間に挟んで

  少し高いところにある小楢コナラ

  白樺シラカバと重なっている



 最初の一行、この前のなぞなぞの返事です。という一文を見た瞬間、少女の鼓動は跳ね上がった。「やっぱり気づいてくれてたんだ!」という嬉しさと恥ずかしさで少女の顔は赤く緩んだ。

 そして、暗号を読む。難しくはない。この前のなぞなぞと二行目をみれば、暗号の解き方は自明である。

 暗号を解いた少女は嬉しさのあまり飛び上がり、机に足をぶつけた。しかし、その痛みすら今は気にならない——いや、声も出せず悶絶しているところをみると、かなり痛かったようだ。

 なんとか痛みから復帰した少女は座り直し引き出しから「ネタ帳」と書かれたノートを取り出した。

 今日も少女は考える。青年に解いてもらうための問題を。

 次はどんな問題を後輩が先輩につきつけるのか、その話はまた今度————

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