学園七不思議

学園七不思議 問題編

「先輩……先輩ぃ……」

 静かに扉を開け少女が入ってくる。

 うなだれて肩を落とし、フラフラとした足取りで、絵に描いたように落ち込んでいた。まるでゾンビのようにゆっくりと歩いている様は、不思議とわざとらしさはなく、少女の落ち込みようがはっきりとみてとれた。

「どうしたの?」

 窓際で本を読んでいた青年は、顔を上げて少し心配そうに少女を見た。

 少女はいまにも泣き出しそうな顔で青年を見つめ、倒れ込むように椅子に座り込んだ。青年は慣れた仕草で栞をはさみ、本を閉じて少女が話し始めるのを待った。しばしの沈黙の後——

「テストが散々だったんですよー!」

 勢い良く天井を仰ぎ見ながら少女は叫んだあと、バタンと机に突っ伏した。。

「僕が勉強してるときに、一緒に勉強すればよかったのに」

 青年は励ますでも慰めるでもなく、自業自得と言わんばかりの態度だった。「うう……」と涙ながらに青年を上目遣いで見つめながら言った。

「今日は学園七不思議です」

 どうやらいつも通り問題は出すつもりのようだ。

「じゃあ聞こうか」

 少女は姿勢を正し、大きく深呼吸をすると、両手で頬をパンッと叩いていつもの笑顔に戻った。

「じゃあいきますよー!」



 そう、これは実際に起きた事件などではない。

 後輩の少女が先輩の青年のために問題を出し、先輩の青年が後輩の少女のために解答する物語である——



 これは私の友達の学校で起きた事件です。

 学校の七不思議ってたいてい七個もないじゃないですか。あっても歩く人体模型とか、目が動くベートーヴェンの肖像画みたいな典型的なやつで穴埋めしてたり、七個全部知るとやばい! みたいな誤魔化しかたしてますよね。

 その学校も例外じゃなくて、七個もない七不思議があったんですよ。

 七不思議の噂は前々からあって、一部の生徒の間ではたびたび話題になっていたんです。その七不思議の一つが部室棟に幽霊が出るというものでした。

 ありきたりではあるんですけど、運動部が使ってる部室棟には真夜中に少女の幽霊が出るって噂で、その噂が七不思議に興味のない生徒にも急激に広まったんです。広まった理由は単純で、実際に不思議なことが起きちゃったんです!

 最初の事件はサッカー部の部室から、いくつかの私物が消えたことです。といっても整理整頓が行き届いてない部室だったので、最初はただの紛失だと思われてたんですけど。消えた私物も大したものじゃなかったので、あまり問題にもならなかったんです。ところが、朝来るとただでさえ片付いてない部室がさらに荒らされてたり、ユニフォームが消えたりと少しエスカレートしてきたんです。さすがに少し問題になっちゃって、先生も警察に届けるべきか迷いはじめてました——そうそう、その先生がすっごい美人らしいんですよ! 背もすらっとしていてスタイルもバツグン! 何人もの男子生徒が玉砕してるらしいんですけど、サッカー部の部員との噂もあるらしくて。ドキドキしちゃいますよね! 生徒と先生の恋愛とか! でも珍しいですよね、サッカー部の先生が女性だなんて。なんか学生時代は女子サッカーで有名だったらしいですけど——話を戻すと、そんなときサッカー部の女子マネージャーが先生に相談して部室に隠しカメラをしかけたんです。誰が犯人かわからないので、みんなには内緒にして。

 最初の数日は何も変なものは写ってなかったんですけど、ある朝カメラを確認するとすごいものが撮影されてたんです!

 写っていたのはポルターガイストでした! 誰もいない部室で、ボールが転がったり、ロッカーが開いたりしてたんです!

 その話が、夜中に部室棟で少女の幽霊を見た! とか、野球部の部室でもポルターガイストが起きた! みないな尾ヒレがつきまくって学校中に広まったんです。

 先輩! 幽霊はいるとおもいますか!

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