予知能力者の逃亡
予知能力者の逃亡 問題編
「先輩! 先輩!」
いつも通りの勢いで、活発そうな少女が滑り込んできた。
少し日に焼けた健康的な肌と、ほどよく筋肉がつき引き締まった体が少女の活発さをよく表している。
「ん?」
相も変わらず本を読んでいた青年が顔を上げた。
切れ長の目と通った鼻筋、整った顔立ちだが、どこか人を寄せつけない雰囲気のある青年だ。
少女は青年の向かいの席に駆けより「がしゃーん!」と効果音を口にしながら座った。
「今日は予知能力です!」
青年はいつものように栞を挟み、本を閉じた。
「じゃあ聞こうか」
青年が本を閉じる動作を楽しそうに見つめていた少女は、たっぷりと息を吸い込んで話し始めた。
「じゃあいきますよー!」
そう、これは実際に起きた事件などではない。
後輩の少女が先輩の青年のために問題を出し、先輩の青年が後輩の少女のために解答する物語である——
あるところに予知能力を持った男性がいました!
予知能力といっても、好き勝手に未来がわかるわけじゃなくて、彼は夢の中で未来を見るんです。いわゆる予知夢ってやつですね! そして彼の予知夢のいいところは、ちゃんと危険な未来を回避することができるということです!
例えば、雪山で遭難する夢を見たら、雪山に行かないことで遭難を回避できるんですよ!
彼は予知夢を利用してお金を稼いで、何不自由なく暮らしてました。株とかで大儲けしてたんです!
そんな彼には、子供の頃から何度も見ている夢がありました。それは、飛行機や船に乗ると必ず死んでしまう夢です! 飛行機もヘリコプターも飛行船も墜落! 船もジェットスキーもカヌーも筏も沈みます! とにかくありとあらゆる空飛ぶ乗り物と、水に浮かぶ乗り物に乗ると死んじゃうんです! といっても、飛行機にも船にも乗らずに生活するのはそんなに難しくないので、彼はとくに困ることなく生活してました。
しかし! 彼はある日とんでもない夢を見るんです。それはなんと戦争の夢でした! 隣の国との外交関係が悪化して、ついに戦争になっちゃうんです! ミサイルがドカーンと打ち込まれて首都機能は麻痺! 各地で暴動や略奪はおきるし、寝る場所どころか食べるものにも困って、ついには爆撃で死んじゃうんです!
いくら予知能力があるといっても、彼は一般人なので外交問題をどうこうすることはできなくて、戦争を回避することは出来ません。それでもなんとか戦争を回避しようと訴え続けますが、そもそも予知能力を誰にも信用してもらえませんでした。しょうがないので、彼は諦めて一人で国外逃亡することを決めます。幸いお金はあるので外国でも生活に困ることはありませんからね。
彼は無事に国外逃亡を果たし、戦争に巻きこまれることなく海外で余生を送りました。
さて、彼は飛行機にも船にも乗れません。いったいどうやって国外逃亡を果たしたんでしょう!
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