怪盗Xからの予告状

怪盗Xからの予告状 問題編

「先輩! せんぱ——!」

 勢いよく扉を開けた少女は言葉を失い硬直した。

 いつもは本を読んでいるはずの青年が勉強をしていたからだ。

「ももも、もうすぐテストありましたっけ!?」

 これ以上ないほど動揺しながら少女は叫んだ。彼女の記憶ではテストはまだまだ先の話である。

「テスト前じゃなくても勉強はした方がいいよ」

 青年は少女に顔を向け、少し呆れた顔で言った。

 少女は「そうですよねー……」と落ち込んだ様子でとぼとぼと青年の向かいの椅子に座り込み、がさごそとカバンを探り始める。

「先輩! 今日は怪盗です!」

 少女はそう言いながら二枚のカードを取り出した。どうやら勉強をするわけではないようだ。

 青年は勉強の手を止め、少女が取り出したカードを見る。

「じゃあ聞こうか」

 手作りと思われるカードには、少女らしい丸文字で「予告状」と書かれていた。

「じゃあいきますよー!」



そう、これは実際に起きた事件などではない。

 後輩の少女が先輩の青年のために問題を出し、先輩の青年が後輩の少女のために解答する物語である——



 世界中の宝石はすべて手に入れる! 予告状を出し、厳重な警備をかいくぐり、鮮やかに宝石を盗み出す! その名は怪盗エックス

 というわけで、怪盗から予告状が届きました!

 狙われた宝石は、世界最大のイエローダイヤモンド「月光」です!

 所有者はナントカ財閥の当主のナントカさん。ナントカさんは色んな美術品を集めていて、個人で美術館も所有しています。その美術館の一番の目玉がその「月光」なんですよ。

 そして届いた予告状がこちら! じゃじゃーん!

 貴殿の所有する世界最大のイエローダイヤモンド。その輝きを我が物とするため、月光の名を冠した宝石にふさわしき時にお伺いいたします。それでは五日後の月曜日、月の輝く夜にお会いしましょう。怪盗エックス

 ナントカさんは大慌てで美術館の警備を増強します。しかし、その翌日にもう一つの予告状が届いたんです! その二枚目の予告状がこちら! ばばーん!

 先日、貴殿のもとに届いた予告状は偽物である。月光は私がよりふさわしき時に頂きに参ります。それまでは無くされたりなさらぬようご注意を。怪盗エックス

 ナントカさんは大混乱! どっちが本物の予告状なのかわかりません。偽物には盗まれない自信はあるものの、二枚目が本物だとするといつ怪盗エックスがくるのかわかりません。とにかく警備を厳重にして対応しますが、ずーっと厳重な警備をしていては美術館の営業にも支障がでちゃいますし。

 そして日曜日。いよいよ明日は一枚目の予告日というタイミングになり、ついにどっちの予告状が本物か判明しました!

 さあ! どっちが本物でしょう!

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