第二十七回 蒼き狼の血脈(小前亮)

<あらすじ>

チンギス・カンの長子ジュチの子でありながら父の出生をめぐる疑惑を理由に後継者からはずされたバトゥは、暗闘をつづける一族に背を向けひたすら帝国の拡大に力を注ぐ。モンゴル高原から遠く地中海まで遠征し勝ち続けるという空前の壮挙をなしとげ「賢明なる王(サイン・カン)」と呼ばれた男の鮮烈な生涯。

※引用:Amazon.co.jp

https://www.amazon.co.jp/dp/4167801922/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_kGlUAb0NJE4K9


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 ジョチの子・バトゥを主人公に、チンギス・ハン亡き後のモンゴル帝国、モンケのカアン就任までを描いた物語。 久し振りに知的好奇心を刺激される良作でありました。


 偉大なる初代が死んだ後の、帝国内の暗闘は中々描かれる事は無いし、バトゥの西方での活躍も聞いてはいたが、物語として初めて読んだ。そのバトゥだけでなく、アレクサンドル・ネフスキーやバイバルスも登場するんだから、気分は「蒼き狼と白き牝鹿」状態。


 また、この作中でバトゥが繰り返し、帝国の再編(分裂)の必要性を説いていた。広大な領土を持つ帝国は自らの重みで自壊すると。いつもモンゴル帝国を大きく四つに分けた再編を「勿体ない」と思っていたが、これは帝国が生き残る為だったんだなぁ。


 そして、この「蒼き狼の血脈」というタイトルは、バトゥはチンギス・ハンの正統な孫という意味ではないだろうか。能力的にも、一門で最もチンギス・ハンに似ている。その一方で、父親のジョチのように宿命を受け入れる度量は父譲り。


 客人という名を付けられ出生の秘密を有するジョチの子であったが、彼は能力をもってチンギス・ハンの血脈である事を示したのではないか。


 面白い歴史小説でした。大変不遜な物言いであるが、小前亮先生は本当に作品を重ねていく毎に面白くなる、成長型作家さん。順に読む事をお勧めします。



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区分:モンゴル史

ジャンル:歴史小説

続編:なし※クビライの作品はあり

こんな物書きにオススメ:巨大帝国を書きたい人

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