第八回 新・雨月 戊辰戦役朧夜話(船戸 与一)

<あらすじ>

◆ 上巻

慶応四年、西軍・長州藩の間諜・物部春介は修験僧に扮していた。木戸孝允から新発田藩での一揆使嗾の命を受けて、成功。次に武器商人スネル兄弟経営の商館を潰すため新潟へ。長岡の元博徒・布袋の寅蔵は、家老の河井継之助に信服して組を解散。以降、継之助のために動いている。会津藩政務担当家老・梶原平馬は、奥羽越列藩同盟結成を機に、北方政権樹立を夢みる…。

◆ 中巻

六月、会津城下に輪王寺宮公現法親王が到着。しかし、西軍に奪われた白河口奪回は膠着状態にあった。西軍側は伊地知正治と共同で指揮をとるため土佐の板垣退助が加わった。奥羽越列藩同盟軍による白河の小峰城奪回の総攻撃は八回とも失敗。長岡城を奪還したものの、負傷した越後の蒼龍・河井継之助は斃れ、秋田久保田藩が西軍側に寝返り、三春藩も裏切った。奥羽越列藩同盟の瓦解が始まった。

◆ 下巻

西軍、薩摩は西郷吉之助が戦略を立て、伊地知正治に戦術を任せた。長州は大村益次郎が戦略を立て、山県狂介に実戦を指揮させた。一方の奥羽越列藩同盟、会津の佐川官兵衛は戦場では猛将だが、戦況を変える力はない。そして土方歳三は局地戦には強い、戦略なき戦術家だった。…冒険小説を牽引してきた船戸与一が独自の史観で日本近世史に真っ向から取り組んだ渾身の巨篇。

※引用:Amazon.co.jp

https://www.amazon.co.jp/dp/4198629048/ref=cm_sw_r_tw_dp_Q.GAxb2A16XFG


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 THE・歴史エンタテイメント!

 心地よく胸踊って、骨の髄まで堪能できました。

 架空の主人公を使い、戊辰戦役の裏を、面白く描いています。 そうしたフィクションの中で、土方・佐川・細谷・河井・伊地知・山県が小気味良く、史実ではないであろうが「こうしたことがあったのではないだろうか?」と思わせるように活躍。そして読み進めている内に、自分も奥羽側として戦っている感覚に陥ります。

 これは、著者の高い描写・構成力によるものでしょう。

 また、読み終えた時の寂寥感が半端ない。尊王・攘夷。開国・佐幕。色々騒いでも、これしか結末が無かったと思わせてくれます。


 ああ、無常……。




 ハードカバーの帯が秀逸でもあります。


「西軍、薩摩は西郷吉之助が戦略を立て、伊地知正治に戦術を任せた。長州は大村益次郎が戦略を立て、山県狂介に実戦を指揮させた。一方の奥羽越列藩同盟、会津の佐川官兵衛は戦場では猛将だが、戦況を変える力はない。そして土方歳三は局地戦には強い、戦略なき戦術家だった」


 も、燃えるじゃない!


 追伸、時折入る新政府&会津批判が痛快。アンチ会津観光史学の僕でも、不快にならずに楽しめました。


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区分:江戸時代(幕末)

ジャンル:歴史小説

続編:なし

こんな物書きにオススメ:戦争の無常を描きたい人

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