夢を追う者たちのけっして生易しくはない青春

役者を目指す者と絵描きを目指す者が思わぬきっかけで同居することになるところから始まる、決して生易しくはない青春の一ページ。
自分の内面すべてをむき出しで吐き出す主人公の一人称には凄まじい気迫があり、最初から最後まで緩むことなく疾走する。そこには厭世や嫉妬や苛立ちや後悔や、とにかく人間としてのあらゆるドロドロとした感情が渦巻いている。
にもかかわらず、主人公は何度つまづいてもその都度立ち上がり、必死で前を向こうとする。そのつねに奥歯をかみしめているような姿にはヒリヒリするものを感じる。
彼女は自分に厳しく非常にストイックである。が、同時に自分しか見えていない。他人とのつながりを拒むようなその頑なさ、視野の狭さは役者を志す者として致命的な欠点にも見えるのだが、それが何かを目指す人の強さであり、弱さなのかもしれないと思う。
この主人公が、絵描き志望の女性や同じアパートに暮らす者たちと関わる中で、人というものに何を見るのか。最後にかけての怒涛のような感情の流れには、呑み込まれるようなカタルシスがある。この物語はひとりの人間が本当の意味で開眼する話でもあると思う。
テンポよくどんどん展開し、笑わせながら抉ってくる物語。
不安の中で何かを目指し続ける人にはぜひ読んでいただきたい青春小説である。

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