主人公ゆらりちゃんはひたむきで健気で天使みたいなピュアな子。お相手のミナト君はクールな王子様キャラなんだけど、ゆらりちゃんのことが好きすぎて少し歪んだ黒王子になっているところが微笑ましいです。読者はきっと「この恋がどうか成就しますように」と応援せずにはいられないでしょう。
読後感はアップルシナモンティーみたいな感じです。紅茶にジャムを溶かしたやつ。スパイシーで、でも最後に甘さがグッと効いて、身体がポカポカあたたまるような……
作者の遊井そわ香さんは一貫して純愛(もしくは溺愛)を描き続けている書き手さんなので、安心してお勧めできる恋愛小説です!
おそらく読者がハッピーエンドを期待して読み始めるであろう、幼なじみの両片思い恋愛ストーリー。これは二人の距離が縮まったり離れたりするじれじれをモヤモヤしながらじっくりと味わい、いかにそのもどかしさを楽しめるかにあると思う。
そういう意味ではこの作品は読者の気持ちいいところをくすぐってくる、絶妙なじれじれ具合を堪能できる物語である。
頬が緩むような幼なじみ時代のエピソードから不遇の年月を経て再会した二人が、不器用に近づいていく過程が絶妙の距離感で書かれている。そして要所に配置された脇役陣が完璧な役目を果たしている。なかでも敵役に配置された人物の描き方はなかなか興味深いものがある。
SNSなどの小道具がいい仕事をしているのも面白い。ヒロインになるもよし、激重一途男子になるもよし、どうか登場人物になりきってめいっぱい喜んだり切なくなったりしてください。
幼稚園からの幼馴染だった、鈴木ゆらりと由良水都。けれども、ゆらりは小学校で絶好宣言をしてしまう。
そんな二人が同じ高校に通い、再会を果たすが……
もう、この二人の関係に何度と、胸がむずむずとした事か。
高校生特有の思春期。水都はモテるから、ゆらりは自分が貧乏で可愛くないから、とか二人の距離はなかなかに進まない。
でもそこが良い!
もう付き合っちゃえよ、と何度思ったことか。
まわろ邪魔すんなよ、と何度突撃したくなったことか!
二人の感情、二人を取り巻く環境、その全てが合わさって、だんだんとムズキュンが強くなっていく。
是非ともラストまで読んでいただきたい。
オススメです。