不器用な両片思いストーリーは回り道を楽しむに限る

おそらく読者がハッピーエンドを期待して読み始めるであろう、幼なじみの両片思い恋愛ストーリー。これは二人の距離が縮まったり離れたりするじれじれをモヤモヤしながらじっくりと味わい、いかにそのもどかしさを楽しめるかにあると思う。
そういう意味ではこの作品は読者の気持ちいいところをくすぐってくる、絶妙なじれじれ具合を堪能できる物語である。
頬が緩むような幼なじみ時代のエピソードから不遇の年月を経て再会した二人が、不器用に近づいていく過程が絶妙の距離感で書かれている。そして要所に配置された脇役陣が完璧な役目を果たしている。なかでも敵役に配置された人物の描き方はなかなか興味深いものがある。
SNSなどの小道具がいい仕事をしているのも面白い。ヒロインになるもよし、激重一途男子になるもよし、どうか登場人物になりきってめいっぱい喜んだり切なくなったりしてください。

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