儚いガラス細工を胸に抱え、それでも日々は続く
- ★★★ Excellent!!!
人生にはいくつもわかれ道があって、そのときに自分が選んだ道を後悔することはできないようになっている。それは大きな決断だけでなく、日常の些細な出来事の中にも存在する。たとえその結果がなにかを壊すものだとしても、もとに戻すことはできない。
ふとしたことで散ってしまいそうな儚いガラス細工を抱えながら、人は日常を送っているのかも知れない。外からは見えないであろうその繊細な機微を、作者は深くまで潜り込んで描いてみせる。
ガラスの破片が刺さるような、小さな、あるいは大きな痛みを抱えつつ、それでも日々は続く。本作を読んでそんなことを感じた。