ガラスの道化師の末路

この小説は、対比がとても美しい。

主人公の祐二の生きる世界は、言い方は悪いが淀んだ灰色だ。
その中でえり子は対照的に眩いまでに美しい。
けれどそんな二人は共通点がある。

二人はドライブに行き、そして、そんな危うい二人の関係の象徴のようなガラスの道化師が、えり子が買ってもらうという形で登場する。
哀愁あるメロディの鳴る、オルゴールつきガラス細工の示す未来は、たぶん明るくはない。

祐二が欲望をさらけ出さなかったら、ガラスの道化師も、えり子との二人の未来も、明るいものとなっただろうか。それは誰も分からない。

灰色の世界に、えり子、ガラスの道化師、そして、湖畔など、色鮮やかなのにどこか冷たさや静けさのある色彩が美しく移ろい、また世界は灰色に戻っていく。

読後、なんとも切なくやりきれない気持ちにさせられるのは、読者がいつの間にか祐二になり、失ったものや、これからの不安を抱えたまま日常に戻っていくからだ。

生きることはそれだけで十分難しい。

それでも、祐二は冬の湖畔での出来事を胸に、生きていく。