感情の首根っこを掴んでぐわんぐわん揺すぶられる小説。

役者を目指し、全精力を傾けて努力しているが、オーディション連敗中の志維菜。
アパート隣室のドアをキャミソール一枚で叩いていた詩恵奈と、ひょんなことから同居することに。

文章に勢いがあって、いろいろ笑えるんですけれど、胸にグサグサ刺さるというか。
安定した職に就かずに夢を追うことに冷たい世間に対し攻撃的で、返す刀で成果の出ない自身をも傷つける志維菜の心の叫びに、「お前は、自分の夢に対して真摯か?」と問い返される気がするんですね。
周囲に「三度の飯より○○が好き」みたいな、他に趣味もなくその道に邁進する人がいるので、その人に比べると自分は努力していないなぁ、という引け目。
世の中の全ての人間が、志維菜のように自分を追い込んで、背水の陣を敷く必要はないと思うのですが。
私にそういう生き方ができないように、志維菜はその生き方しかできない。

読みながら、志維菜と一緒に怒って、挫折して、泣いて。
一気読みでしたが、ジェットコースターのようで、とにかくパワーのいる小説でした。

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