概要
腹ちがいの弟が、人魚の標本の子を孕んだ。
弦本清(つるもと・しん)はある日、同級生の麦原千波(むぎはら・ちなみ)が水泳部を休部していることを知る。身ごもったから、という理由で。
清はひそかに千波の懐胎を喜ぶ。千波は清の半分だけ血がつながった弟で、ゆいいつの血縁だったから。天涯孤独の彼にとって、系累が増えることは喜ばしかった――たとえそれが、理科室にある人魚の骨格標本の子だなんて、得体のしれないものだったとしても。
清はひそかに千波の懐胎を喜ぶ。千波は清の半分だけ血がつながった弟で、ゆいいつの血縁だったから。天涯孤独の彼にとって、系累が増えることは喜ばしかった――たとえそれが、理科室にある人魚の骨格標本の子だなんて、得体のしれないものだったとしても。