タイトルとあらすじに「どういうこと?」となり、読んでみたらとんでもなく素晴らしい人間ドラマでした……うわぁ……すごい……唯一無二の世界観に、スッと溶け込む少年たちの思い。こんな小説があるなんて。なんでもっと早く読まなかったんだろう……!ちなみにタイトルにもあらすじにも一切偽りはありません。本当にそういう内容です。でも、読んでいくとそれが全然不思議じゃないというか、ああ、そうか、となるこの素敵な読書体験。なんと言えばいいのかわかりませんが、とにかく、読んで損はない名作です。
少年が人魚の標本の子を妊娠するーーなんとも不思議な設定ですが、本質は王道の人間ドラマです。腹違いの弟や養父との距離感、そして孤独。主人公とその周囲の人々との関係の変化が、瑞々しい文体で描かれています。傷つくことへと恐れを乗り越え、かけがえのない人たちとの絆を手に入れた少年の姿に、胸を打たれました。