★★★ Excellent!!!
万有引力とは、ひき合う孤独の力である。 バケツエンターテイメント(脚本アーカイブ
詩人谷川俊太郎は『二十億光年の孤独』という作品の中で、広がる宇宙の壮大さと、それと反比例するかのように訪れる人類の孤独を言葉で綴った。増え続ける宇宙空間と、個人の小さなくしゃみ。その対比が想起させる孤独は、『孤独』という言葉よりも遥かに壮大な奥行きを感じさせることだろう。
そんな宇宙を前に、我々が暮らす社会というものはとても矮小で陳腐なものなのかもしれない。隣の娘さんがプチ整形をしたとか、近所のジャスコが潰れてイオンになったとか、宇宙の規模と並べればなんと小さな悩みなのか。
しかし人間というものは、理屈を踏まえていても目の前にある社会へ目が向いてしまう生き物である。結局はだれそれよりも成績が良い悪いだとか、だれかしよりもお金があるないだとか、もっと言えば仲間外れにはなりたくないだとかで、『孤独』の前に宇宙や近所の井戸端会議といった規模は関係がなく、存在するのは一人ひとりの中にぽつねんと浮かんでいる寂しさだけなのだ。
学生時代、そんな社会の煩わしさと、そんな孤独の穴を埋めるため『セカイ系』というジャンルを食い荒らしていた時期がある。社会性を排し『きみ』と『ぼく』だけで構築される世界観は、彼ら彼女らの関係性が直接世界の命運を握ってしまう。それこそ二人だけの関係性が宇宙空間にまで影響を及ぼす作品もあり、私はそんな孤独の埋め方にあこがれを抱いていた。
もちろん大人になった今では、宇宙よりも目の前にある社会的な諸々をこなすことで手一杯であり、『きみ』と『ぼく』だけで成立する世界など御伽噺のような存在であることは痛いほど肌で感じるようになった。だが時折、心の亀裂から噴き出す孤独が、あの頃の憧憬を携えながら社会人となった自分の顔を覗き込むのはどうしてだろうか。
『ふたりぼっちの星の家』は、そんな孤独のうやむやを抱えている時に出会った作品である。
太陽の真裏…
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