地球と何から何まで瓜二つの星を見つけてしまった事から起きてしまった最終戦争。文明も環境も、そしてほぼ全ての命を根絶やしにした愚かな行為の跡で、懸命に生き続けていた1人の男。ですが、彼の運命は遥か彼方から聞こえる1人の女性からの通信で大きく変わり始め……。
まさに題名通り、広い宇宙の中でふたりぼっちになってしまった「2つの命」。たとえ遠く離れていても、そこで待つ誰かに会いたい……その思いで動き出した彼らを待っていたのは……。
もう変えられない所にまで至った運命の中でも、きっと2人は幸せを掴めたのかもしれません。
哀しくも暖かな、宇宙規模の恋愛作品です。
人は独りでは生きていけない。それにはさまざまな理由があると思う。
生殖と言う意味でも、もちろん、一個の個体としても。
どうしてひとりぼっちはこんなにも辛いのだろうか。
もし、自分が最後に生き残った一人で、自分以外に唯一生き残った人間が信じられないほど遠い場所にいたとして、果たしてその場所に向かわずにいられる人間がいるだろうか。
いや、きっといないと思う。
この作品の主人公には幸運にもその手段があった。
その先の顛末は、ぜひ読んで確かめてもらいたい。
ただ、未読の方でこのレヴューを読んでいる方に約束したい。
この作品を読んで私は、夜の空に叫びたくなるほど寂しく、また、残酷なほど愛しい気持ちにさせてくれた。
きっと、読んで後悔はしない。
私はこの作品を読んで、本当に良かった。本当にそう思える作品だった。
そして読む時は是非、ラストの文章に注目していただきたい。
このラストが作品の素晴らしさを引き立たせていると思いませんか?
それまでの物語の全てを際立たせる、ラストの一文。
ここまでの寂しさと温かさの両立を、しっかりと心に沈めてくるのは見事としか言いようが無いと、私はそう思ってしまった。
切なくて、純粋で、温かいのだけれどとても寂しい。
きっと、大切な誰かに会いたくなる。そんなオススメの短編小説です。
星新一のショートショートを読んでいるような、ワンアイデアの光る掌編です。
星間戦争という壮大な背景を下敷きにしつつも、語られるのはミクロな一個人の私事。
そこにあるのは、ただただ人情に訴えかける寂寥感と渇望だけ。
戦争のスペクタクルでもなく、宇宙空間のセンスワンダーでもなく、作者が書きたかったことは本当に些細でシンプルな、しかし人間らしさを保つ上での根源的な感情でした。
「人は一人では生きられない」という、ただそれだけのことを。
また、最後の結末は、実に本格SFらしい命題を感じさせます。
人間とは肉体が本体なのか、精神が本体なのか。
体が滅びても、心さえあれば、それは個人として確立するのか。
魂のありかは、どこにあるのか――。