誰かを求めるには、独りでなければならない

星新一のショートショートを読んでいるような、ワンアイデアの光る掌編です。
星間戦争という壮大な背景を下敷きにしつつも、語られるのはミクロな一個人の私事。
そこにあるのは、ただただ人情に訴えかける寂寥感と渇望だけ。

戦争のスペクタクルでもなく、宇宙空間のセンスワンダーでもなく、作者が書きたかったことは本当に些細でシンプルな、しかし人間らしさを保つ上での根源的な感情でした。

「人は一人では生きられない」という、ただそれだけのことを。

また、最後の結末は、実に本格SFらしい命題を感じさせます。
人間とは肉体が本体なのか、精神が本体なのか。
体が滅びても、心さえあれば、それは個人として確立するのか。
魂のありかは、どこにあるのか――。

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