『一緒にいたい』そんな感情を呼び起こさせてくれる素敵な作品。

 人は独りでは生きていけない。それにはさまざまな理由があると思う。
 生殖と言う意味でも、もちろん、一個の個体としても。
 どうしてひとりぼっちはこんなにも辛いのだろうか。
 もし、自分が最後に生き残った一人で、自分以外に唯一生き残った人間が信じられないほど遠い場所にいたとして、果たしてその場所に向かわずにいられる人間がいるだろうか。
 いや、きっといないと思う。

 この作品の主人公には幸運にもその手段があった。
 その先の顛末は、ぜひ読んで確かめてもらいたい。
 ただ、未読の方でこのレヴューを読んでいる方に約束したい。
 この作品を読んで私は、夜の空に叫びたくなるほど寂しく、また、残酷なほど愛しい気持ちにさせてくれた。
 きっと、読んで後悔はしない。
 私はこの作品を読んで、本当に良かった。本当にそう思える作品だった。
 そして読む時は是非、ラストの文章に注目していただきたい。
 このラストが作品の素晴らしさを引き立たせていると思いませんか? 
 それまでの物語の全てを際立たせる、ラストの一文。
 ここまでの寂しさと温かさの両立を、しっかりと心に沈めてくるのは見事としか言いようが無いと、私はそう思ってしまった。

 切なくて、純粋で、温かいのだけれどとても寂しい。
 きっと、大切な誰かに会いたくなる。そんなオススメの短編小説です。

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