架空の世界を舞台にしたSFですが、難解な部分がひとつもない、非常に読みやすい物語です。ユーモアと親しみのある語り口にリアルな生活感とぬくもりを感じます。
厳しい現実の中で一日一日をただひたすら生きることから生まれる等身大の言葉。
そんな少年時代を回想で振り返る主人公がたどりつく心境。
この物語に散りばめられているのは、人生との戦いの先に見える光のような叡智に満ちた言葉です。
彼らが手に入れる世界は生き方や社会のひとつの理想形であり、物語の中で起こる進化もさることながら、全体を通じて語られるのは精神面での進化論ではないかと思います。
ここへ到達するには人間はあとどれぐらい苦しむのだろうか。
生きることの基本に目を向けた本作は、お金や損得や欲などが複雑に絡まり合った今の社会でこそ読まれてほしい。たくさんのことに気づかせてくれるでしょう。
進化論という壮大なテーマが冒頭に登場して……。
難解な話が始まるのかな?? と思いきや、まったくそんなことはなく、私のようなムニャムニャでも分かりやすい表現で、綴られています。
そう、この小説は、主人公レンジが大人になって、日記形式で、私のようなムニャムニャな読者でも理解できる易しい言葉で、語りかけてきます。
しかしながら、随所に、当たり前の大切さ、でも年をとって社会に出ていくうちに忘れてしまうような、真の幸せとは何かということを、諭してくれます。
お金持ちが幸せじゃない。立派な家を持っていることが幸せじゃない。自慢できる家族がいることも幸せじゃない。
幸せは、誰しもが持っているんです。だけど、気づかない。気づきたくない。
(特にコロナ禍の今だからこそ、ハッとさせられることがあるかも?)
キーワードは「ムニャムニャ」です。
ムニャムニャって一体何??
一言では表せませんが、この物語の至る所に登場して、すべてに意味を持つ。
それがムニャムニャです!
でも大丈夫! 読めば意味はわかります。
そして最後、私自身もムニャムニャだったんだな、と。
意味の分からないレビューになってしまいましたが、本当に面白いですし、家族や友達にも読むことを勧めたいほどの良作です!!
ある日突然、孤児となった「レンジ」と弟の「コトラ」。二人は街の有名な浮浪少年「ケン」の元に身を寄せ、新たな家族として三人での生活が始まる。ギリギリのその日暮らしだけれど、そこにはいつも笑いと思いやりが溢れていた。
やがて、猛烈な不況が世界を襲う。さらに厳しくなる彼らの生活……そんな中、奇跡が起きる! それは切実な欲求と強烈な意志がもたらした、人間の進化だった!
その奇跡は、貧困に喘ぐ子供達の間にも同時に起こり始める。しかし皮肉なことに、そのせいで子供達の身に悲劇が……
憐れな子供達を救うため、レンジ達は子供十字軍を結成する!
持たざる者が身を寄せ分かち合い、逞しく生きていく。どんな災厄に見舞われようが、彼らはいつも朗らかで、痛快なほどに前向きだ。(まぁ、大体は)
この回想録には、レンジ達が身をもって学んだ大切な言葉がいくつも散りばめられている。世の中がどう変わろうとも、幸せな人生に必要なものはいつも同じ。子供にだってわかるくらい、いたってシンプルなことばかりなのだ。
是非読んでみてください。だってきっと、本当はみんなムニャムニャ。そして、人生はこれからも容赦なく続いていく! ムニャムニャ!
この物語の少年たちは、過酷な運命に放り出された子どもたちばかりです。
でも彼らは絶望することなく、しっかりと現実を見つめて、踏み出していきます。
まるで、冒険者が困難を物ともせずに立ち向かっていくように!
生きるために必死で働きながらも、それを分かち合う愛を忘れずにいる彼らは、貧しくても温かい家庭を築いていました。
その姿に、胸が熱くなります。
物語は、もちろん波乱万丈。
進化の出来事あり、経済危機あり、自然が牙を剥き……大波が次々と押し寄せて、社会全体が変わっていきます。
でも、少年たちが育んだ家庭は壊れることなく、どんな時も温かい光に溢れていました。
なぜなら、それは必要最低限で得られる光だったから。
多くを必要としなければ、いつでも守れる光なのです。
シンプルに生きる大切さに気付かせてくれる物語。
どんなに絶望的な状況にも楽しむ心は消せないと勇気をくれる物語。
ムニャムニャと名付けられた存在達が、いかに一番賢いかを感じさせてくれる物語でもあります。
語り口は、常に冷静で端的。
でもだからこそ、余計な感情に左右されることなく、大切なメッセージがズドンと心に響いてきます。
是非、皆さんも、彼らの人生を体験してみてください。
お勧めです。
こちらの作品は、一人のムニャムニャが回顧的に語るダイアリーです。ムニャムニャとはなにかについては、読んでいただけたらすぐにわかります。
ストーリーは、荒廃した近未来をベースに、子供たちが困難を乗り越えて成長していくものになります。
ですが、その内容はよくある話ではありません。実に巧みに大切なキーワードを仕込ませてあり、そのキーワードをベースに波乱万丈のストーリーが展開していきます。
そして、ラストに全てのキーワードが一つになったとき、そこにあるのは我々が普段忘れてしまっている大切なことでした。
このことに気づいたとき、感動が静かに押し寄せると共に、実は全ての生き物は所詮ムニャムニャにすぎないという清々しさすら感じました。
人生に大切なことは常に身近にある。けど、身近にあるがゆえに見失ってしまう。
そんな気持ちになるこちらの作品、ぜひ人生で一度立ち止まって読んでみてはいかがでしょうか。
きっと明日を生きるヒントを、ムニャムニャたちが教えてくれると思います。
何の紹介文かと思われるでしょうが一読すれば必ずわかります。
主人公は恵まれない子どものレンジ。
弟のツバサと共に仲間のケンを頼ります。
そこから物語は走り出します。
良い老人がいれば悪い老人もいて。
子どもは進化をして。
そのために子どもだけで団結をして。
レンジ、ツバサ後にコトラ、ケン。
それぞれにパートナーが現れ。
レンジの境遇は実に波乱万丈。
彼らを取り巻く社会も大激動。
それでもレンジはぶれません。
コロコロと変わりますが根っこは変わらないのです。
深刻でシリアスなストーリー?
いえいえお気軽に読める彼らのサクセスストーリーと捉えてもいいくらい。
進化論をもう一度考えたくなる作品でした。
架空の歴史を辿った未来の社会で、健気に生き抜く少年たちの姿を描いた物語です。
1話1話のボリュームはそこそこありますが、驚くほど読みやすく、毎回気づくと読み終わっていました。
成長した主人公が自分の過去を語っているという構成のため、波瀾万丈な人生をぎゅっと濃縮して味わっているような旨みがあります。
このお話の登場人物たちは、みんな貧しくとも前向きで、生きる力に満ち溢れています。
心が折れてしまいそうな辛い境遇に落とされても、仲間と手を取り合い、酷い大人たちから弱者を守ろうとします。
身の丈を知り、相応の道を過たず選び取る。
きっと難しいことなのに、それを自然にやってのける彼らの姿が眩しい。
そういう「正しさ」が報われる気持ち良さが、この物語にはあります。
読めば必ず明るい気持ちになる。
今の時代だからこそ読みたい物語です!
とても胸を熱くさせてくれる作品に出会えました。
ひとつひとつのエピソードは、「○冊目」というタイトル通り、まるで人生史丸一巻を読んでいるかのようなボリューム。
字数ではなく、ストーリーの密度が凄いのです。
レンジという男子が、親に捨てられながらも、弟を守り、親友と共に強く生き抜いていく青春ストーリーです。
彼が語る自分の人生が、まさに奇想天外・波乱万丈の連続。
次から次へと巻き起こる珍騒動の数々!
決して裕福ではない暮らしの中で、それでも真に大切なものを何があっても決して手放さない。そんな彼らの姿に憧憬の念を抱きます。
今私たちの周囲に溢れているものは、本当に全て必要でしょうか?
彼らはどんなに生活が豊かになっても、決して散財せず、本当に大切なものが何なのかを理解しています。
だから、ある事件により財産が意味をなさなくなった時にも、悲観することなくありのままの姿でい続けます。
子供の時から。大人になっても。
どんな時にも、みんなただのムニャムニャ。
何度も出てくるムニャムニャという言葉、とても可愛いのですが、作品全体もそんな感じでとても明るくコミカルに進みます。
深く考えれば、人類の根源を問うような深遠なテーマでもあるのですが、楽しく笑いながらさらっと読むこともできます。
どんな時にも家族を大事にする、愛すべきムニャムニャたちの姿には温かな感動を覚えます。
何があっても最後まで、安心して読める、とても幸せな作品です。
大人に振り回された子供たちは、ある日「進化」という奇跡を手に入れます。
彼らはその力を使い、同じように苦しむ子供たちを親の元から救い、「子供十字軍」なるものを結成します。
彼らは時に裏切られ、疑うことを覚えるようになりましたが、それでも人の善意を信じて進みます。
その純粋さは、やがて大人たちをも変えていくのです。
長い時間をかけ、子供だった彼らも大人になり、さまざまな奇跡を自らの力と周囲の助けで掴み取っていきます。その快進撃たるや、誰もがワクワクすることでしょう。
しかし、世界のすべてがひっくり返る、ある事態が起きるのです。
私の心は揺さぶられました。
これは絶対、今の世の中に読まれるべき物語。
すべては諸行無常。でも、慈悲と、可能性は滅ぶことは無い。
そんなことを信じさせてくれる物語です。
はじめに言いますがこの作品メチャメチャ面白いです。
関川さんの作品は2つ目ですが早くも関川ワールドにハマりつつあります。
SFなのだけど、取っ付きやすく誰もが理解しやすい。その一因はかみ砕かれて丁寧な文章にあると思います。読者をひきつけつつ、謎も残しつつ、綺麗に文章が展開していき、最後にはすっと気持ちよく終わる。なんでこんな面白い文章が書けるんでしょうね。
話の内容を少し述べますと幼くして母に捨てられた主人公のレンジ、弟のコトラ、そして二人を救ってくれたケンちゃんの送る物語です。貧困にあえぎ、少ない給料で雇われ身を粉にして働く。そんなある日、コトラの身に異変が起きて……。
子供十字軍を結成したり、捕まってしまったり。レンジの人生は波乱万丈ですが、同時に煌めきにも満ちていると思います。
それは支えてくれた多くの仲間がいたからです。出所した時レンジは自分に職がないことを焦りますが、周りの人たちの掛ける言葉がまた良い。周りの人たちはレンジという人間の可能性を信じていたのかもしれません。
人生にはつまらない瞬間や振り返りたくない瞬間もあると思いますが、彼らのように一生懸命生きることを思い出して、時には自分もまたムニャムニャなんだと思いながら日々を送っていければと思います。
主人公の少年「レンジ」は弟の「ツバサ」と共に母親から捨てられてしまいます。
そこで友人の浮浪少年「ケン」を頼って共に生きていくことを選択するのです。
家族を守るために仕事を覚え、時に悔しい思いをしたり、人に騙されそうになったり。
やがて「レンジ」は自分のするべきことは自分と同じように大人のために苦しめられている子供たちを助けることだと考えるようになります。
あらすじだけでは過酷な物語のように思えますが、主人公たちが前向きで明るいので暗い雰囲気はまるでありません。
少し荒唐無稽な展開もあるのですが、それを感じさせないくらいに登場人物の想いや作品内の雰囲気が情感をこめて描写されるので「こんな奇跡も起きるのだな」と納得させられるだけの説得力があります。
「ボーイズダイアリー」とあるとおり少年が成長していく日々を描いた物語ですが主人公たちは最終的には中年くらいに成長していきます。
しかし人は良くも悪くも大人になっても役割という「殻」の下に「少年」を隠し持っていて、あの頃のように自信を持って楽しく生きることを忘れてはいけないのだ、というメッセージがタイトルとストーリーに込められていると感じました。
感受性の大切さを忘れがちな大人のための現代の童話ともいえるかもしれません。
読みやすく、最後まで楽しむことができました。
本来の『平等』という言葉には――
「才能や能力、自分らしさを一人一人が思う存分発揮する」
という意味が込められている。どんな判断も比較もない、考え方も生き方も人それぞれ……それで良い。それが『平等』であると。
人は、つい誰かと比べて一喜一憂してしまうものです。作中でも、主人公のレンジが思い悩むシーンがありました。この悩みにとらわれている限り心が休まることはありません。そんなレンジを助け、気分を盛りたててくれるのがケンやコトラといったムニャムニャな仲間たち。彼らも、それぞれ得意な能力を存分に発揮して個性を光らせています。人よりも「良い、悪い」「できる、できない」「上だ、下だ」などと判断せず、運命に任せ切って生きる。誰もが『平等』に生きているなと感じさせてくれる作品です。
もちろん、作者様の才能や能力、そして作者様らしい筆づかいを存分に発揮しているハートフルな仕上がりになっていますよ☆
少年少女というのは、結束したがるものなのである。
「怪人二十面相」には、少年探偵団。
そう、事件現場でBDバッヂを落とし、仲間に知らせるのだ。
小林少年は確か、仏像の中に身を潜める離れ業をやってのける。
ここでも、こどもたちが大活躍する。手を取り合って。
主人公レンジ、弟のコトラ、そしてケンちゃん。
もちろん、恋だってきちんとするのだ。
このお話はね、こどもたちに開かれた秘密図書館の1冊だ。
惜しげなく、困った子たちに貸してくれる希望の書。
コトラの進化は、まるで飛び出す絵本。
頁を開くと、ムニャムニャがそっと宝を差し出す。
貧困からスタートして、苦難を乗り越え、知恵を持ち寄り
運命に挑む。彼らの進む世界は、それでもあたたかい。