貧しい少年たちが家族を守ることを通じて成長していく冒険物語

主人公の少年「レンジ」は弟の「ツバサ」と共に母親から捨てられてしまいます。
そこで友人の浮浪少年「ケン」を頼って共に生きていくことを選択するのです。
家族を守るために仕事を覚え、時に悔しい思いをしたり、人に騙されそうになったり。
やがて「レンジ」は自分のするべきことは自分と同じように大人のために苦しめられている子供たちを助けることだと考えるようになります。

あらすじだけでは過酷な物語のように思えますが、主人公たちが前向きで明るいので暗い雰囲気はまるでありません。

少し荒唐無稽な展開もあるのですが、それを感じさせないくらいに登場人物の想いや作品内の雰囲気が情感をこめて描写されるので「こんな奇跡も起きるのだな」と納得させられるだけの説得力があります。

「ボーイズダイアリー」とあるとおり少年が成長していく日々を描いた物語ですが主人公たちは最終的には中年くらいに成長していきます。

しかし人は良くも悪くも大人になっても役割という「殻」の下に「少年」を隠し持っていて、あの頃のように自信を持って楽しく生きることを忘れてはいけないのだ、というメッセージがタイトルとストーリーに込められていると感じました。

感受性の大切さを忘れがちな大人のための現代の童話ともいえるかもしれません。
読みやすく、最後まで楽しむことができました。

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