厳しい人生との戦いの先にある精神の進化論

架空の世界を舞台にしたSFですが、難解な部分がひとつもない、非常に読みやすい物語です。ユーモアと親しみのある語り口にリアルな生活感とぬくもりを感じます。

厳しい現実の中で一日一日をただひたすら生きることから生まれる等身大の言葉。
そんな少年時代を回想で振り返る主人公がたどりつく心境。
この物語に散りばめられているのは、人生との戦いの先に見える光のような叡智に満ちた言葉です。

彼らが手に入れる世界は生き方や社会のひとつの理想形であり、物語の中で起こる進化もさることながら、全体を通じて語られるのは精神面での進化論ではないかと思います。

ここへ到達するには人間はあとどれぐらい苦しむのだろうか。

生きることの基本に目を向けた本作は、お金や損得や欲などが複雑に絡まり合った今の社会でこそ読まれてほしい。たくさんのことに気づかせてくれるでしょう。

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