第2話 一枚の写真
2話めにして重い話を一つ。
元カレ・元カノとの思い出の品。
付き合っている恋人がそんなものを持っていて激怒した。
そんな経験がありませんか?
ですが、とても重いものもあって……。
――――
これは私が年上の先輩男性から聞いた話です。
先輩が付き合っていた彼女がある時、おずおずと1枚の写真を取り出しました。
「本当は、見せるべきじゃないって思っているけど、この写真だけは残しておきたいの」
その写真には、室内で知らない男性と仲良くお鍋を囲んでいる彼女が写っていました。
明らかに元カレとの写真。それもかなり親密で幸せそうな雰囲気です。
先輩は、ムッと思ったものの、彼女がこれを見せてくれたことには理由があるんだろうと思ったそうです。
怒られると思っていた彼女は、先輩の様子に少し安心したようで、写真を捨てられない理由を話してくれました。
この写真に写っている男性は、間違いなく彼女の元カレ。それも同棲していた男性でした。
当時、二人が住んでいたのは神戸。
――幸せな生活はある日、突然終わりました。
平成7年1月17日。阪神淡路大震災。
彼女はその日、元カレと死別してしまったのです。
元カレは施設出身で天涯孤独の身でした。わかっている親類縁者はだれもいません。ましてやあの大震災で様々な情報が失われ、元カレも行方不明者にカウントされていたそうです。
つまり――、元カレがこの世に確かに存在していた。
その証は、このたった一枚の写真しかないのです。
彼女はそれでも先輩とお付き合いをして、真剣だからこそ自分からその写真を打ちあけたのです。
先輩は黙ってうなづいて、「大切にね」と言ったそうです。
――――
モノにはそれぞれ込められた歴史や想いがあります。
中には捨ててはいけないものもあるんだなというお話でした。
ちなみに、私は元恋人と別れた時、一人で海までドライブに行き、「さよなら」と言いながらプレゼントの指輪を投げ捨てましたねぇ。
大層な意気込みで行ったものの、いざ投げたらあっさりと海に消えて……。
……あれ? このこと、今の相方に話してなかったかも(汗)。あはは。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます