第16話 亡くなられた方のご挨拶
カクヨム異聞選集が開催されるようですね。
応募要項によれば「実体験に基づくオリジナル作品のみ応募可能」。
これは実体験を語ったもの限定なのか、実体験をベースにした創作なのかわかりかねますが、今回は私がお寺さんから聞いたお話をひとつ――。
◇
「亡くなった方が、みずからご挨拶にくる」
思わず、え? と聞き返したくなるお話です。
突然、誰もいないのにピンポンが鳴ったり、電話が鳴って出ると切れていることがある。
そういう時は、しばらくすると“誰それが亡くなったので
今では、そういう事があると、先に枕経の準備をして連絡があるのを待っているとか。
◇
お寺さんは、しみじみとおっしゃいました。
「あれはね。亡くなられた方が、自分でお願いに来てるんだよ」
決して嘘を言っているようには見えません。
不思議ですね。他の人が言うと信じられませんけど、お寺さんが言うと不思議と納得できてしまいます。
「怖くないんですか?」
とお
「まったく怖くないですよ。檀家さんですし……。むしろ、ありがたいなぁって思っていますかね」
とおこたえになりました。
幽霊と聞くと、私なら怖いですけど。多くの方の引導をされた、お寺さんならではの言葉でしょうか。
科学が発達して、論理的な思考が当たり前になっている私たちにとって、幽霊という非科学的な話はどうしても信じられません。
けれども、現実には説明のつかないこともまだまだあるようです。
◇
さて、この話を元にカクヨム異聞選集に応募しようかと思ったものの。
オチ無し、盛り上がり無し。
ぜんっぜんっ、物語にならない。
でも体験談って、そういうものかもしれません。
ちなみに、ほかの体験談だと、かつて京都に住んでいた1年の間に2回も金縛りになったことが……。
あれも夜、寝入りばなにいきなりだったから、まったく脈絡もなく、これまた物語にはなりません。
もちろん、京都は戦乱つづきの土地柄ですから、何が起きてもおかしくはないでしょう。
平安時代には怨霊におびやかされていましたし、私が住んでいた頃には、たまに貴船神社の林から藁人形が発見されたりするとか。
ちょっと脱線しました。
さて皆さんは、お寺さんのお話をどう思います?
怖い? 怖くない? 信じられない? 不思議?
◇
ちなみに葬儀の後に来る場合もあるらしいですよ。
その場合は、遅くとも四十九日までに来るらしく……、「四十九日の忌明けまでは、しっかり御回向しましょうね」と。
さすがはお寺さん。話の締めもしっかりしているようです。
※京都ではお寺さんのことを「おっさん」と呼びます。
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