第17話 忘れえぬ一言

 皆さんにはありませんか?

 誰かから言われた、心に残る一言――。


「お前、毎日がすごく長く感じてるだろ?」


 ある日、私に投げかけられた先輩の一言です。


 仕事が決まり、先輩について仕事のやり方を教わる。

 けれど、私には辛いなと思うこともあって。


 なにしろ、私の性格はかなくなな所があったり、冗談を真に受けたり、からかわれるのが嫌い。

 どんなにライトなものでも性的な話など、ぜったいに聞きたくない。


 今ならわかるけど、私って取っつきにくい性格だったと思う。

 そのため、職場でもどことなく距離感を感じたりしていました。


 ……そう。

 その時の私にとって、職場での、たった半日がものすごく長く感じていたのです。


 ある日、突然、とある先輩が私の所にやってきて、冒頭の、


「お前、毎日がすごく長く感じてるだろ?」

と言ってきたのです。


 固まってしまった私を見て、さらに一言。


「ばーか。いっこいっこ100%でやってないから、そうなるんだよ」



 思わずハッとしました。


 そっか。

 心のどこかで、嫌だな、嫌だなって思いながら仕事をしていたのです。

 目の前にある仕事の一つ一つを、自分の100%のつもりで取り組む。


 すると、半日どころか1日があっという間に終わるようになりました。

 気がつくと、自分の立ち位置も変わっていて、大きな仕事も任せられるようになって。

 気がつくと、性格も変わっていたかも。……まだ冗談とか、性的な話を受け流すのは苦手だけれどね。


 あの時の先輩からもらった一言。

 今では部署も変わり、もう会うことも無くなってしまったけれど。

 あの一言が今の私をかたち造っているのです。


 ありがとうね。先輩。

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