第9話 こんな「よい人」「わるい人」はいかが?


私の家に古い書物が少し残っています。

今日はその中から――、


※本文がくずし字の平仮名ばかりなので、適宜に漢字に置き換え句読点を入れています。



「よい人ばかりで和合せぬ話」


ハハ:コレ、よめヨ。せがれのところへのお茶をもっておいで。


ヨメ:ハイハイト。そのお茶をもち亭主の後ろへ置き「ココへおきますよ」ト言いつつ歩みゆく。


テイ主:いきなり後ろへ手をやれバ、茶碗ころげだし、その煮え茶にて手をやけどをいたし、アツツト言いながら、女房をよぶ。


ヨメ:ハイハイ。


テイシュ:お前が悪い。なぜ前へおかないのだ。


ヨメ:口の内にて「おっかさんがお茶をもっていけといわなけりゃ、こんな粗相できぬものを。おっかさんが一番悪い」と口小言くちこごとをいう。


ハハ:これを見て「せがれ、お前が悪い」と言う。


右三人とも我が悪いと思えぬ=「よい人」ばかりにて和合いたさぬわけ。


※亭主はヨメが悪いといい、ヨメはおっかさんが悪いといい、ハハは伜が悪いという。自分は悪くないんだから、=よい人。



次いで逆パターン。


「悪い人ばかりで和合する話」


ハハ:コレ、よめヨ。せがれの所へのお茶をもっておいで。


ヨメ:ハイハイト。そのお茶を亭主の後ろへ置き、ここへ置きますよと言いつつ歩みゆく。


テイシュ:いきなり後ろへ手をやれバ、茶碗ころげだし、その煮え茶にて手をやけどをいたし、アツツト言いながら、その始末をいたし、「私が悪かった、よく見てとればよかった」と言うを聞きつけ、


ヨメ:「わたくしがわるうございました。煮えたったものを後ろへ置くとは、まことに届かぬ事ですみません」ト、手をついてあやまる。


ハハ:その行為を聞きつけ、「わたしが悪かったヨ。もっていけと言わずにここへ呼べば粗相はできぬものヲ」と言う。


このもの三人ながら「悪い」人ばかりにて和合いたすわけ。


※自分が悪いという=悪い人。



明治時代の教訓本のようですが、前後が紛失してしまって題名とかは不明です。



私は悪くないという人=他の人が悪いという人。


私が悪かったという人=まず自省する人。



不必要なことまで背負い込む必要はないですけど、やっぱり自省する人の方が魅力的だなって思います。



しかもね。ここだけの話。これって年齢関係ないんですよ。

いい年齢をした大人でも、他の人に責任をなすりつける人も……。


まさに、言うはやすく行うはかたし!


孔子は「れ、日に我が身を三省さんせいす」と言いました。

ここから名前をとったのが「三省堂書店」さんですね。



私など、とても三省はできませんが、自分のしたことは素直に反省したいと思います。



もちろん、自分の書いた文章も。

……そしていつか。もっと面白い物語が書けるようになりたい。

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