第8話「愛の難破船」

「客船は嵐に合い、沈没してしまった」


 と、男は言った。


「乗ってた人は?」


 と、女は言った。


「他の乗客は知らない。海に投げ出され、気づいた時には島に漂着していた。その島には、二人しかいなかった」


「えっ!何それ。二人って男と女でしょ?乗ってる時にカップルになったの?」


「いや、全くの知らない同士。島に漂着してから、お互い同じ船に乗ってたのを知った」


「それから?」


「二人は助けあって生き抜いた。島に漂流してからいて1ヶ月後、助けが来た」


「で、二人は恋人になったのね!?」


「いや、二人はただの男女ままだよ。その後、僕も知らない。その場でお別れだからね」


「なんで?誰もいない無人島でしょ!ああ、もしかして貴方の好みは、男だったの?そう?その方が納得いくわ!」


「いや、僕は普通に女が好きさ」


「じゃあ、好みの女じゃなかったって訳ね?」


「どうして君はそうガサツなんだ?」


「じゃあ、なんでその女に手を出さなかったの!?」


「まだ分かんないのかい?」


「だって信じる?あんな可愛い女の人と、1ヶ月も誰もいない島で、二人で暮らしてたのよ!?」


「そうだよ」


「なんで!?」


「だって僕には、君がいたからさ。愛する君が待ってると思ったから、1ヶ月も必死に頑張ったんだ。女の人も同じで、彼氏に会いたい一心だった。だから僕らは助け合って……」


「え~!でも~」


ハア


 僕は深いため息を吐いた。せっかく助かったのだが僕らの愛は……







 どうやら難破したようだ。


おしまい

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