第6話「ピー・マスター 」

カランカラン


 と、ドアベルが鳴る。客が入って来たようだ。


「なあマスター、教えてくれねえか?」


ドシン


 客は言うと同時に、カウンターの椅子に座りこんだ。そして言った。


「排泄物で、健康状態が分かるんだってな?」


 いかつい顔の男は、ギロリとマスターをにらんだ。


「いったい、どこでそれを!?」


 マスターは下がっていた眼鏡を直した。


「あんたが、その道のプロだって事は、分かってるんだ」


 男は真剣だった。


「聞かせてくれ!本当の事を!!」


 客は身を乗り出した。マスターは、珈琲を用意しながら客に話した。


「まずは、トップウォーターだ。水に浮く奴。食生活と胃腸に問題有りだ。つまり不健康!次に、シャローランナー。沈みきれず、浮かび過ぎない奴。これも不健康だ。胃腸に問題が有る。最後に……ディープダイバー。底に沈む奴だ。食物繊維をしっかり摂ったウンコ。つまり健康だ!!」


カタン


 マスターはそう言いながら、客に珈琲を出した。


「すまねえなマスター、それだけ聞けば……」


「まあ待て。まだ続きがある。ひとまず出した珈琲ぐらい飲め」


 マスターは男を諭した。そして珈琲をすする男に話を続けた。


「便器に、ねっとり付く時はないか?」


 マスターが言うと、男はギクリとした。


「あっ!……ある」


「便器に付着する奴は、まだ吸収すべき栄養がウンコに残ってる証拠だ」


「そうだったのか!」


 男は驚いていた。


「そして下痢だったり、すごく薄い茶色の軟便!それは、サーフェスタイプって奴で、水分の摂り過ぎや、乳酸菌等の腸の善玉菌不足が原因だ!!」


 マスターが話終える頃、男も珈琲を飲み終えていた。


「あんたのおかげで助かったよ。これで俺は生まれ変われる!」


 そういうと、男は……


カランカラン


 と、店のドアから出ていった。マスターはそのドアの向こうの男に祈りを捧げた。







『あなたの胃腸に祝福あれ』


 と。


おしまい

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