殺人劇じゃないが、密室殺人事件の推理ドラマのような緊張感を味わえる。
窓の外は土砂降りの雨。外部との通信手段が途切れ、登場人物達はペンションの内に閉じ込められる。
金田一少年の事件簿に出てきそうなシチュエーションではないか。
但し、些細だが、決定的に異なる点が1つ。
誰が殺したか?
ではなく、誰が死んだか?
それについて、雰囲気的には侃侃諤諤の議論が交わされ、その言い合いの果てに人間関係が落ち着く所に落ち着き、翌日には皆が去って行く。
お約束通り、キャラの濃い登場人物が集まり、我儘やエゴを剥き出しにして口撃し合うのだが、その会話が面白い。
本作品も十分に面白いが、これを脚本にした演劇も面白いんじゃなかろうか。
榎本明は当確かな。それと、若い頃の柳沢慎吾。女将は風吹ジュン。
私の年代が望むならば、だけど。
クリスマスのとある山荘に集まったのは、五人の個性豊かな客人。態度の悪い老人、破局寸前のカップル、暗い雰囲気の女、どこか間の抜けた大学生。
そんな彼らが集まる夕食の場で、とあるニュースが流れる。山荘近くの橋で、車が転落したらしいと。それを見た誰かが、こう言った。
「もしかしたらこの中の誰か――もう、死んでたりして」
そこから始まる、奇妙な推理劇。
「誰が殺した」ではなく、「誰が死んだ」を推理する内に、
議論はあらぬ方向へ行ったり来たりで――。
山奥の山荘という、本格ミステリにぴったりの舞台ですが、
しかし展開する話は、「誰かがすでに死んでるんじゃ」という
ある種、間の抜けた話になります。
ただ、議論の中で明らかになる登場人物の心境や
意外な内面は、人情味溢れるもので、本格ミステリにはない
味わいがあります。
クリスマスの夜に起こる奇妙な議論と、クリスマスならでは奇跡。
とても味わい深い物語だと思います。
物語の舞台となるのは、クリスマス当日に嵐が直撃した山奥のペンション。その日集まったのは、偏屈な老人、破局寸前のカップル、陰気な女性、常識知らずの大学生……
そんな面子が顔を突き合わせても会話が盛り上がるわけない。しかし、ペンション近くの橋で車が川に転落したというニュースが流れ、さらに客の一人が「もしかしたらこの中の誰か――もう、死んでたりして」と言い出したことで事態は一変。
かくして集まった客たちの間で、この場にいる人間のうち誰が幽霊なのかを決める、不毛な論争が始まってしまうのだ……。
最初の方はちゃんと真面目に推理で幽霊を捜そうとしていたのに、気が付けば投票で決めようとしたり、自分こそが幽霊だと立候補者が現れたりして幽霊探しは二転三転。さらに話が進むにつれて、それぞれが抱える事情が明らかになり事態は思わぬ方向へ。
性格も年齢もバラバラな個性豊かな客たちが「誰が幽霊なのか」を巡って、変な理屈をこねながら口論する様子は非常に小気味よく、一気に物語の中へ引きつけられ、気が付けばクリスマスならではの味わい深いラストまで一気に持ってかれる。
(クリスマスぼっちが楽しく過ごすための4選/文=柿崎 憲)
クリスマスの夜のペンションを舞台にした、推理? コメディ? 人間ドラマ? 何と言えばいいかわからないけれど、面白い話。
登場人物は、集まった客たちと、ペンションのオーナー。推理小説の伝統舞台とも言えるこのシチュエーションで、話は展開します。議題は「この中の誰かが、すでに死んでいるはずだ」。
ストーリーが進むにつれ、それぞれが抱える事情が明らかになり、広がり――収束していく。
話が進むほど、どんどん面白くなります。8話構成ですが、何だこれ? と思わずに、じっくりと読んでいただきたい。きっと満足いただける結末が、待っていますから。
長野の高原にあるペンション『森の隠れ家』にて、
嵐になったクリスマスイブに繰り広げられる珍妙な会合。
その議題は、
「増水した川に車ごと落ちて死んでしまった幽霊は誰だ?」
ペンションのオーナーで物語の視点、田上淳子。
飛び入り客のチャラい大学生、城ケ崎直哉。
二度目の来訪者にして偏屈な老人、岡島康二。
恋人に対してつっけんどんな態度の藤本美月。
ずぶ濡れで到着した、藤本の恋人の小林学。
陰気で不気味な黒ずくめの女、奥山彩音。
推理して推薦して立候補して抽選する。
その過程で明らかになる、それぞれが背負う事情。
団結して訴えたメッセージは、愛のドラマを呼び寄せる。
温かな余韻の中で起こるどんでん返しは、美しくも切ない。
テンポよく展開されるストーリーは、
作者ご本人の解説通り、舞台演劇でも観てみたい。
デートコースの意味と彼の正体はすぐわかった。
私なら哲学の道、銀閣寺、鴨川からの病院を咄嗟に提案する。
一癖二癖ある登場人物たちの人生ドラマにドキドキしつつ、
最後は落ち着くところに落ち着いたと感じた。
とても綺麗で端正なコミカルミステリー。
自分にはない作風だからこそすごく好きで、憧れる。
聖誕節快楽!
周末愉快!
荒れ狂う嵐の中で進められる話し合い。
その議題は「すでに死んでいるのは誰か」。
ひとりの客が漏らした言葉から始まったとんでもない会議は、雷鳴が轟くごとにまた、不思議な方向へと進んでいきます。
はてさて、死んでいるのは誰でしょね?
さーぁ、みんなで考えよう!
推理、推薦、立候補…と場が次々動いていく展開は、読者を飽きさせることがありません。それぞれの事情が明らかになっていく過程も違和感無く話に含まれており、見事でした。
話の収束のつけかたも(ネタバレを避けて深くは言えませんが)クリスマスに相応しいラストだと思いました。
会場はクローズドサークルですが、惨劇ミステリーが苦手な方でも大丈夫。面白さと読後の爽快さを保証いたします。
ただし一つだけ注意を促すなら、バトルものではありません。
タイトルでつられた方はそれだけ心に留め置いてください(笑)。
冒頭から若干のネタバレですが、「おまえ」を探すことが中心にあるというよりはあくまで人間ドラマ、あるいは奇跡の話です。構造上どうしてもここでは言えないことがいくつかあるので、その点は読み終わったあとどっかで話し合いましょう、という場があればいんですけどね……。
話の整合性といいますか、要素の組み合わせ方、などなどが綺麗に組み上がっていてすごいな、と思います。ミステリー・シチュエーション・コメディというか、嵐のペンションですが陰惨ではなく、基本線は楽しい話です。ドラマとかになったら面白そうですね。または演劇とか。
面白かったです。