クリスマスの山荘で起こる、人情溢れる「死者探し」

クリスマスのとある山荘に集まったのは、五人の個性豊かな客人。態度の悪い老人、破局寸前のカップル、暗い雰囲気の女、どこか間の抜けた大学生。

そんな彼らが集まる夕食の場で、とあるニュースが流れる。山荘近くの橋で、車が転落したらしいと。それを見た誰かが、こう言った。

「もしかしたらこの中の誰か――もう、死んでたりして」

そこから始まる、奇妙な推理劇。
「誰が殺した」ではなく、「誰が死んだ」を推理する内に、
議論はあらぬ方向へ行ったり来たりで――。

山奥の山荘という、本格ミステリにぴったりの舞台ですが、
しかし展開する話は、「誰かがすでに死んでるんじゃ」という
ある種、間の抜けた話になります。
ただ、議論の中で明らかになる登場人物の心境や
意外な内面は、人情味溢れるもので、本格ミステリにはない
味わいがあります。

クリスマスの夜に起こる奇妙な議論と、クリスマスならでは奇跡。
とても味わい深い物語だと思います。

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