禁書――リベル・プロヒビトゥス――

　物語の舞台は昭和九年の日本。
　京都の旧制第三高等学校の学生蕗屋清一郎は、伯母から呼び出されて、関東山地のただ中にある葛瀬村へと向かった。しかしなぜか伯母たちは彼を呼び寄せた事情など何も教えず、蕗屋の中で不信感が募っていく。ちょうどそこに、従妹の女学生宮瀬弓子が東京から帰ってきた。実は蕗屋を呼び寄せたのは弓子であり、彼女から、村で最近起こった悲劇を教えられて蕗屋は愕然とする。それは、彼女の弟不二夫が、同年代の友人四名と共に集団自殺したというものであった。動機などはまったく謎のままであり、弓子からその解明を依頼された蕗屋は、鍵を握ると思われる不二夫のノートを委ねられる。そこには、奇怪な中世キリスト教異端の書物がびっしりと書き写されていた。
　一方、大阪府警察部の刑事郷田三郎は、千里山住宅地で…続きを読む