対極を主題に置いているのかと思わせておいて、そうではなく、かと言って蔑ろにもしない巧みな文章に笑わせて戴きました。
読んでいる間中、次々と沸き起こる文章のどんちゃん騒ぎに翻弄され、森見登美彦氏の有頂天家族を読んでいた時に似た感覚に襲われる。
乱歩が火星の運河に載せた謝辞文の心境で書いたのではなかろうかと思うくらい荒唐無稽な話が進んで行き、それがまた収束すら見せずにラスト2行で回帰する様は、徒然なるままに想像力をフル回転させ、思いつくままに書いたのだろうなと伺える。
しかし、それがまた良い。
そうでなければならない。
最後になりましたが、弟の風貌、前述した乱歩作品の様に女性なのかもと当たりをつけていた事は秘密です。
白状します。
実はこちらの作品はけっこう前に拝読しておりました。
しかし、あまりの予想外、というより冒頭のほんの数行以降は予想する隙も与えないほどの衝撃の展開に、どうレビューしてよいやらと頭を悩ませたままこっそり×ボタンを押してしまったのでした。
いくらかレビューの経験値を上げ、早寝早起きでコンディションを整え、ようやくレビューと向かい合うことが叶いました。
序盤の「これから斜め上に打ち上げますよー」宣言から、物語の行方は加速しながらぐんぐん高度を上げ、大気圏を突き抜けてもなお勢いを増していきます。
慣性の法則などお構い無しに、燃料ぶっぱなしで宇宙を突き抜けていくような爽快さ。
それはもうこの作者さまでなければ表現できない文芸の域であると感服いたしました。
個人的には、朝の連続テレビ小説「ダップンさん」のくだりにお茶を噴きました。
そんな予想外の作品ですので、他の方のレビューでの反応を読むのもとても楽しいです。
一粒で二度おいしい素敵な作品を読ませてくださりありがとうございました。
どうしてこうなってしまったんだろう?どうしてこうなってしまうのだろう?作者の慟哭が聞こえるようなコメディ中編です。
早くに両親を亡くした兄弟がお互いを支えあい…という文学的、感動的な物語になるはずが、どんどんと暴走をはじめ、アクセル全開でエンディングに突っ込んでいきます。
このあたりに作者の力量・感性・文章力がいかんなく発揮されていきます。とにかくリズムのいい文章、荒唐無稽をねじ伏せるようなストーリー、有無を言わせないキャラクター設定と、ストーリーテラーとしての作者の本領発揮です。
なぜか悲しくて笑いたくなってしまう、そんな物語です。