第2話決断と逃亡



俺は森の道なき道をただひたすら歩いていた。もう、五時間くらいだろうか。くそ、脚が痛い。

「そろそろ休憩にしないか?限界なんだが」

俺が話しかけると相手は振り向きもしないでいい放った。

「元は、あんたが悪いんでしょ。あんたのせいで今日中に国境を越えて“アマトラン”までいかなきゃいけなくなったのよ?わかってるの?わかったら黙って歩きなさい」

俺が話しかけた金髪ツインテールの女はまた歩き出した。

いや半分はお前のせいだろ。



どうしてこうなった?


6時間前────




「は?」

俺は巨大なクレーターのど真ん中に立っていた。ただ一人で。おかしい、さっきまで町にいたはずだ。確か俺は、エクスカリバーを引き抜いて…。

「おい、街が消えたぞ」

すると手に持っていたエクスカリバーがカタカタと震えながら答える。

「“消えた”んじゃなくて“消し飛ばした”のよ!!」

消し飛ばした?意味わからない。

「誰が消し飛ばしたんだ?」

「あんたよ!!」

「俺が!?!?」

は?俺が町ひとつ消し飛ばしたってのかよ!?そんなチート技俺には……。あ……。

「まさか、お前がゆっくり抜けって言ったのって……」

エクスカリバーは溜息をつきながら答える。

「こうなるからって事よ」


つまりは、俺がおもいっきりエクスカリバーを引き抜いたことにより俺は剣を振り上げる形になってしまった。名剣クラスの破壊力の凄まじい武器になれば一振りで山が消えるらしい。その中の頂点に君臨するエクスカリバーを振れば町の2、3個は軽く消し飛ぶらしい。ふざけんな。


「要するに半分お前の破壊力じゃねぇか!!」

「だから言ったじゃない!?ゆっくり優しく抜いてねって!!」

「そんなの誘ってる女ぐらいにしか思えねぇだろ!!」

「何考えてるのよ!!この変態!!」

いやマズイ。非常にマズイ。俺は町ひとつ吹き飛ばしただけじゃない。ファーストに住んでた住人全員殺したことになる。大量殺人鬼じゃねぇか!!

「お前のせいで殺人鬼じゃねぇか!!俺の異世界ライフを返せよ!!」

するとエクスカリバーが光に包まれ俺の手から離れる。なんだ!?

「仕方ないわね。半分キチンと説明しなかった私が悪いのだし……」

その光は人の形になり……。

「今後あなたがどうなるか説明してあげるわ」

エクスカリバーは、金髪ツインテールの美少女に変身した。

「お前そんなことも出来るのかよ!?」

すると……。

「え?レベルアップ?」

俺の目の前にそんな文字が浮かび上がる。俺のレベルは79と空中に表示されている。そして擬人化したエクスカリバーの目の前にも同様に……。

「あなたが町ひとつ消し飛ばしたのと、街の住人皆殺しにしたお陰でレベル上がったわよ」

「やめろおおおお!!!」

え、つかこいつのレベル……。

「お前レベル1027って!?俺弱すぎじゃね!?」

「違うわよ!!私が強すぎるの!!普通の人間なんて一生の内に50行けば凄い方なの!!あんたも強い方なの!!」

え、マジかよ俺最強かよ。じゃねぇわ。

「悪い、話それたわ。俺はこのあとどうなる」

「あんた自由ね……」


エクスカリバーの説明によると、俺はこのあと騎士団、向こうの世界でいう警察に捕まると確実に殺されるらしい。その前に拷問で死ぬより最悪なことをされるらしい。


「じゃあバレないようにここから離れれば……」

「バカね、こっちの世界では“浮遊魔力残量(ふゆうまりょくざんりょう)”って言うのを調べられる力があるの。これは誰でも使えるんだけど、まぁ浮遊魔力残量っていうのは、向こうで言う指紋ね」

「つまり?」

「あんたがここで何をしたか誰にだって分かるってことよ。この世界に魔王軍以外で犯罪が起きない理由がこれよ」

マジかよつまり女の子とエッチなことしても他の人にバレバレってこと!?最悪じゃん!!

「打つ手はないのか!?俺拷問されてぼろ雑巾にされた後に殺されるなんてごめんだぞ!?」

するとエクスカリバーはやれやれと言った表情を見せる。

「あなたに二つ選択肢をあげるわ。“逃げるか”“魔王を殺す”か、これしか道はないわ。」


エクスカリバーが言うには、ひとつ目の選択肢「逃げる」

これは、隣にあるナンバニアの敵国“アマトラン”に行き亡命する。そうすればファーストを破壊した手柄で英雄的な扱いを受けれるらしい。

二つ目「魔王を殺す」

ナンバニアの王に魔王の首を差し出しファーストのことをチャラにしてもらうという2卓だ。


「アマトランに亡命しまーす!!」

「即答ね!?」

「だって魔王何処にいるかわかんねぇし、王さま許してくれなかったら死ぬじゃん俺。死んだのに死ぬの嫌だし」

「まぁこんなに早く死にたく無いわよね。でも王さまは、許してくれると思うわよ?魔王の首を差し出せば」

「それって」

すると俺に背を向け歩き出すエクスカリバー。

「“魔王を倒した者がこの世界に君臨する”これはこの世界の絶対的な掟なの。つまり首を差し出せば世界を統一出来るってことよ」

なるほど、そりゃ皆必死こいて魔王討伐するわな。

「それじゃ行くわよ、今日中に国境を越えないと捕まって終わりよ」

は?

「なんでそんなのわかるんだよ?」

「この世界の最速の乗り物、“音速ホース゛って馬が要るって言えばわかるかしら?」

「やべぇやべぇ!!にげろ!!」

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