第5話問題と解決

荒れ果てた大地に立っている一人と一本。

俺は一つの希望を失っていた、アマトランに亡命すればなんとかなると思っていたがナンバニアとアマトランは現在同盟関係にありアマトランでも俺は指名手配されているらしい。

しかし希望が費えても俺の心は絶望には至っていなかった。

「俺、魔王倒すしかなくなったわ。手伝ってくれるかエクス?」

そう、一つの希望が無くなったのならもう一つの希望にすがればいい。ただそれだけの話だ。

魔王を倒し──そして……

「まぁ、それしか道はないのだし、仕方ないわね。って“エクス”って何よ!?」

「いやエクスカリバーって呼ぶの長いし呼びづらい。だから短くしてエクスだ。それともカリバーの方がいいか?」

するとエクスカリバーは、腕を組みムスっとした顔でそっぽを向いた。

「勝手にしなさいよ、今の主人はあんたよ。あんたが言うことには従うわ」

まぁこれはいわゆるツンデレ反応なのか、どちらにしても了承してくれたらしい。

「んじゃ行くか、魔王を倒すのは聖剣を持った英雄って昔から決まってんだよ!」

「まぁ今のあんたは、破壊神で犯罪者だけどね」

「おいやめろよ台無しだろ」



俺たちはナンバニアを南に進んでいた。

魔王は“ザフロス帝国゛という国に居るらしい。国境には強力な結界が張られていて侵入は困難を極めるらしいが、俺にはこの火力お化けのエクスがついている。ここわ何とかなるだろう。ザフロスまでは一週間も歩けばつくらしいのだが……。

俺は二つの問題に気づいてしまった。

「腹へったし眠いんだが」

そう、寝床と食料だ。寝床は完璧に野宿確定だがこういうときは、アニメや漫画のように見張りと寝るのを交代でやるしか無さそうだ。いや待てよ…。

「エクス。お前眠いとか腹減るとかあるのか?」

「当たり前でしょ?擬人化って言ってもほぼ人間なんだから。それともあなたが剣になった私を運んでくれるのかしら?」

こいつ聖剣の癖に飯食ったり睡眠必要とかマジで使えねぇな!?聖剣になったこいつを運ぶにしてもこいつには鞘がない。持ちながら歩いているといつ暴発するかわからない。それをわかっていていまの一言を出したのがまたムカつくな。

「おい、ふざけんなよ?こっちは半日異常歩き続けてる上に、なんかお前一回振る度に気のせいかも知れないが体力めっちゃ削られてる気がするんだよ。少しは労れ」

するとエクスは、キョトンとした顔でこちらを見てくる。

「あんたなにいってんの当たり前でしょ?聖剣クラスの武器を振れば魔力を大幅に消費するに決まってるでしょ?」

!?……。は?

つまり、火力お化けで手加減も出来ずに食事睡眠を要求してくるだけじゃ飽きたらず、俺の魔力も食いつくそうとしてると?これは……。

「エクス……。お前って……」

「何よ?」

「“ポンコツ聖剣”だな」

するとエクスは顔を真っ赤にして頬っぺたを河豚みたいに膨らませた。

「あんたね!?この神の力で作られた、人間では到底作ることも叶わず一騎当千とも言われる“神器”。その頂点に立つこの私を!!私を!!今なんて呼んだの!?」

「あ??お前ポンコツ聖剣の癖に耳までポンコツなのか!?神器??頂点??知らねぇよ笑わせんな!!加減も知らない脳筋鉄屑が!!」

「あんたね!!弁えなさいよ??私があんたを殺そうと思えばいつでも、赤子の手を捻るように簡単なのよ??」

「あー!でたでた!女はすぐ腹が立つと暴力に走る!こっちが手を出せないと思ってバシバシバシバシひっぱたいて来るんだろ??悔しかったら野生の動物の一匹や二匹、捕まえてきて見返してみろアンポンタン!!」

するとエクスは下を向いてぷるぷる震えだす。やべぇなんか逆鱗に触れたっぽい。もしかして俺マジで自分の剣に殺される??

「……ったわよ…」

「は?」

「わかったわよ、捕まえてきてあんたを見返して上げる……。そしたら!あんた今の言葉前言撤回しなさいよ!?」

こちらに向かって舌を出して「べー!!」とか言いながら走り去るエクス。リアルで女子がやったらドン引きするとこだが、可愛い女の子がやるとちょっと萌えるかも…。いやいやあいつ聖剣だし!!

「あー。とりあえずここで待ってればいいのか?」

俺はその場に座り込み木を背もたれ変わりに使い休憩する。そーいやこの世界で魔法とか使えるのか?使えるとしたらどーやるんだろ。先ほどアマトランの兵士を倒したことによりレベルが121まで上がっていた。流石にそろそろ使えるだろ?レベルも空中に表示されてたからステータスとかもそうなのか?

俺はスマホ画面をスクロールするように空をなぞる──すると……。

「あ、出てきたステータス!!スキルとか書いてあるやつが魔法とかか?」

つか、何で俺この世界の文字読めるんだ?まぁいいか。


俺はエクスが戻るまでの間、スキルやステータスをいじくりまくっていた。魔法とかいろいろなスキルを片っ端から覚えていく。流石に全部は無理そうなので使えそうなやつだけを選択していった。

「よし!んじゃ試し打ちするか!!」

俺は腕を前に突きだし魔法を発動した。

「フレイム!!」

すると手から手のひらサイズの火の玉が発射され草むらを少し燃やして火が消える。

「やべぇ!!魔法使えた!!これでやっと異世界ライフがスタートしたって感じだぜ!!」



なんやかんやで一時間。

俺は自分の体が無理のない程度に魔法やいろいろなスキルを試し打ちしていた。

「なるほど、これがこうで……」

「あんた、私が居なくなって随分楽しそうじゃない?」

お、これはエクスの声だ。なんだか爆音とか聞こえなかったし、捕まえられずに戻ってきたのか?

「なんだ随分おそ……かった…………なっ!?」

エクスは確かに食材…?を持ってきていた。

なんだかよくわからない謎の色をした、どう見ても毒キノコ的なものを大量に、それに混合魔獣みたいな気持ち悪いどう見ても下手物……。食えるのかすら定かではない。

「どう?私だってやれば出来るのよ!」

「そうだな、期待通りだよ、エクス」

「さぁ!早く前言撤回して私を最強の聖剣と言い直すことね!!」

「あぁ、前言撤回するわ。お前もう一回封印される気ない?ていうかお願いします。一生地面に突き刺さったまま世界が終わるその日までじっとしてなにもせず動かないでください。お願いします」

「なんでそうなるのよ!!」

エクスは泣きながら俺に食って掛かってきた。

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