異世界転生して初っ端エクスカリバー手に入れたが扱いに難あり。

田間庭 炭酸水

第1話 始まりの始まり

俺は死んだはずだ。

そう、俺は道路に飛び出し轢かれそうになった犬を庇い、俺が跳ねられて死んだ。この俺、田中たなか 拓真たくまの16年の一生は終わったと思われた。しかし──


「どうなってるんだこれは……」

目の前に広がった光景……。それは────

「ここ完全に異世界じゃねぇか」



目の前に広がった西洋式の建物、歩く動物……。いや亞人あじんと呼ぶべきだろうか?デカイ服を着たトカゲ……リザードマンとでも呼ぼうか、それに獣耳の少年少女。尻尾までついてやがる。この光景を見て誰もが異世界だと分かるくらいに異世界らしい感じだ。


「なるほど、異世界転生か」

俺は落ち着いていた。自分で驚く位に。

普通なら「うおおおお!!異世界転生キターーーー!」とかテンションあがったり「うわ……。俺死んだのか……」とかテンションがた落ちするもんだと思っていたがそうでもないらしい。

ていうか────


「これ金もないし、知り合いとかも居ないし積みゲーじゃね?これ?」

先の不安しかなかった。


とりあえず金と寝床の確保最優先だ。というかこの世界に通貨的なものはあるのだろうか?原始的に物々交換とか通貨が存在しないならそうなるな、とりあえず────


「店っぽいとこの前にでも這ってればその辺のことは解るか」

(あんた、異世界人ね?)

え、何?女の子の声!?


俺は後ろを振り返る。そこには地面に突き刺さった一本の金色の剣。女性の姿などは何処にもない。つか────



「初っ端エクスカリバーあるってどんなヌルゲーだよ」

(悪かったわね。と言うか、あんた私の声が聞こえるのね?)

え、声がエクスカリバーから聞こえるんだが……。

「エクスカリバーが喋った」

(なんか全然驚いてないみたいね、ちょっとくやしいんだけど……)

なぜ悔しがる。そんなにビックリ反応期待してたのか?

「ねぇ、ここってなに設定?魔王とか倒せばいい感じ?」

(設定?まぁ魔王は居るけどそろそろ倒されそうな感じだって“ファースト゛の皆が言ってたわ)

「ファースト?何それ?」

(村の名前よ、“始まりの街ファースト”)

始まりの街だからファーストとか安直すぎんだろ。



そのままエクスカリバーと話していた。エクスカリバーは話せる人がいなかったせいで話したくてうずうずしていたようだった。それになんだか嬉しそうだ。そしてこの国のことをいろいろ教えてくれた。


この国は“ナンバニア”という名前らしい。国の名前から町や村の名前には数字が割り振られているらしい。そしてしっかりとした通貨もあるようでギルドという場所で冒険者になり、モンスターを倒せば金も手に入るようだった。


(それで私を抜こうとしてたオッサンの顔が必死すぎておかしくておかしくて!ねぇ、あんたもそう思うでしょ?)

「いや見てないからわかんないし……」

まぁこれ以上ここでひとり言だと思われて周りの人から変な目で見られるのも嫌だし、さっさとこいつ引き抜いてギルドに行くか。

(ねぇ?ちょっとあんたなにしてんの?)

柄を持った俺にちょっと動揺したように話しかけてくるエクスカリバー

「いや、話せるんだし抜けるだろ的な考えで。それにここでずっと独り言喋ってるように見られても嫌だし」

(まぁ、その、抜いてくれるのはありがたいんだけど……。その、ゆっくり優しく抜いてね?)

え、なんかエロい。

「わかった」

(いい?絶対、ゆっくり優しく抜くのよ!?)

あぁこれは激しく抜けという振りだな?よしわかった。望み通りにしてやろう!!

「うりゃ!!!!」

(ちょっ!?あんたバカ!!)




その日ナンバニアの地図から始まりの街ファーストが消滅した。

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