通り魔に襲われて、瀕死の重傷を負った女検事の伴陽子。
意識不明のまま病院のベッドに横たわっていた彼女だったが、そこへ死神を名乗る怪しげな男が現れる。
その男は特別な魂を持つ彼女に生きるチャンスを与えると言う。
髪をクリスマスカラーに染めた死神・シャール(自称キムタク似)は、饒舌で一見気さくに見えるが、彼が陽子に突き付けた甦る条件はほぼ達成不可能なもの。
しかもいくつかの偶然が重なり、陽子に甦りのチャンスが訪れるとあらゆる手段と屁理屈でそれを邪魔しようとする。
そうなってからが物語は本番。陽子が甦らないようにあらゆる詭弁を弄する狡猾な死神と、その論理の粗を見つけ猛烈に追及する敏腕検事。
命と魂を賭けた勝負の軍配はどちらに上がるのか?
互いの発言の穴を突いた論理合戦と、クリスマスならではの奇蹟が組み合わさる勝負の結末は絶品です。
(クリスマスぼっちが楽しく過ごすための4選/文=柿崎 憲)
RAYさんは法学部出身ですか?法廷論争の遣り取りを、食い入るように読みました。この遣り取りだけでも面白いです。
◯◯が豹変するところも意表を突かれました。◯◯の登場の仕方に油断してました。
それと、キーパーソンが◇◇という設定にも、意表を突かれました。てっきり、△△の方だとばかり思い込んでいました。
振り返ってみると、ベタな展開だなぁと思わせながら、フェイントを仕掛ける所が、この作品の唸らせる魅力でもあります。
RAYさんの作品では「小学生」と「エレベーター」を読みましたが、文字数の有る方が本領を発揮するタイプじゃないですか。食わず嫌いにならずに、他の短編も読んでみるつもりですが、まずは長編の「ドクターの夢」を読むつもりです。
文章に少し固さがあり、論理的にお話が進むのかなと、序盤はそう思ってました。
もちろん、固いからといって読みにくさや退屈さを感じることはありません。
むしろ、論理的に整理整頓された文章が、心地よくスッと頭に入ってきます。
序盤は淡々と物語が進むのですが、後半には熱い対決が待ち受けてます。
その熱さたるや、アクション小説のバトルや、スポーツ小説の接戦にも匹敵します。
台詞同士のぶつかり合いだけで、この熱量を出せるというのは、ものすごいです。
どれくらいすごいかというのは、読んでいただければお分かりいただけます。
そしてストーリー自体も綺麗に纏まっていて、終盤は感動の連続です。
必ずハンカチを用意して読んでください。
法律をからめた斬新な物語に圧倒されました。
シャールの提示した選別。さまざまな縁に希望を抱くけれど、希望が見出だせない主人公の心理描写が絶妙です。
言葉を武器に戦う検事ならではの物語。のらりくらりとした死神との争論は戦闘描写と言っても過言ではないくらい熱く、手に汗を握ります。
そこでまた裏切るの!?と思うほど気持ちが沈んだ頃に現れる純一郎とサラ。ネタバレになってしまうので言及できませんが、そこからラストまでの流れ……大好きです。
あぁ、サラいい子です。悲しくて、切なくてなっちゃいます。
最後の光明を読んで心がスッキリとしました。
卓越した物語に勉強させて頂きました。そしてなにより素晴らしい物語を読ませて頂きありがとうございます(^_-)ー☆
圧巻!!
この言葉以上に本作を一言で語れる言葉をご存じであれば、教えてください。
瀕死の重傷を負う検事、陽子は、見た目も会話もチャライ死神に、生死を分けるイベントに参加を促さられる。
そのイベントが、この物語の基本骨格です。そこで検事である陽子の本領が発揮される、裁判さながらの劇が繰り広げられるわけです。
徹底的に調べられた法曹用語がウルサイかと言えば、むしろ物語の潤滑油のごとく活用されており、リアリティを読み手は持つことができます。これは重要ポイントです。
それになんといっても、ウイットに富んだ会話はそれだけでも面白いときてます。
ラストシーン。
これは、ここまで読まれたかたなら、百パーセント胸に熱いものが込み上げてきて、鼻をすするか目尻を拭くでしょう。私は両方でしたが。
クリスマスの奇跡、ぜひぜひこの熱い物語で味わってみてください。
なぜ主人公は検事でなければならないのか。それが知りたくてこの作品を読み始めました。
その答えは、二つ用意されていました。一つは、死神との対決方法そのもののため。もう一つは、死神と対等に対峙するに足る魂を持つ存在であるために。
クライマックスに向けての伏線が縦横に張り巡らされた、重厚なストーリーです。死神というファンタジックな存在を通して、「人生の選択」という現実世界における深いテーマが突きつけられます。
読者の年齢によって、この作品から受けるインパクトは様々かと思いますが、「エース」読者層よりはるかに年上の私は、死神を前に震えながら己の人生を振り返るような心境に至りました。とても考えさせられる作品です。
ジャンル的にカテゴライズするのが非常に難しい作品ですが、強いて言うとファンタジー要素のある現代ドラマでしょうか。
リアルとファンタジーの相反する要素が、「死神」という存在を軸にして結び付いているお話です。
また、作中では事前に死神側から提示されるルールに則って、様々な論理が展開されたり、それ自体がストーリー上の伏線になっていたりする箇所もあるので、ファンタジー系ミステリ的な読み方もできるかもしれません。
前半部は、ディケンズ『クリスマスキャロル』とかゲーテ『ファウスト』みたいな雰囲気を連想したのですが、後半部の死神との舌戦には法廷物の小説とも異なる、一種独特なノリがありますね。これもファンタジーテイストの効果でしょうか。
各種設定の巧みに収束していくプロセスがお見事です。
自分が信じる正義を自分の責任で行使する、それだけのことに人は感動できる。それは誰もが世の理不尽に接してきたからだろうか。幼い頃に信じたものを、心のどこかで大切にしているからだろうか。
人生をかけて築き上げてきた、権威、名誉、金……それらを全て失うリスクがあっても、親友の娘の光を取り戻すために彼はメスを手にする!
……いや、メスを使うのかどうかは知りませんけど!
読みやすい文章でさらさらと読めました。心の準備をしながら読み進められる物語だと安心していたところに、熱いドクターの登場。不意をつかれて熱いものがこみ上げました(本当です)