俺の名前を言ってみろ!

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第1話 面接でちょっとアレ?って思った

ひょんな事から大金を手にした俺。

おバカな使い方をしない限り、残りの人生は十分生きていける。


でも人は働いてないとダメになると聞く。

会社員になる必要はないし、どうせやるなら好きな仕事をしようと

アルバイト情報誌に目を通した。

丁度そういう仕事があったので派遣会社に電話をする。


面接当日。


派遣会社の担当員に連れられ、お世話になる会社に着いた。

面接官は二人。

どちらも還暦を過ぎたあたりの人生の先輩方だ。

履歴書に目を通している。

 

 面接官A「ほぉ・・経験も資格も有りですか」

 面接官B「色々持ってますねぇ」


 俺「ええ、色々持ってた方が後々役に立つと思いまして」


 面接官B「字がとても上手ですね」

 俺「ええ、書道をやっていたもので」


幼少の頃からずっと書道をやっているおかげで、字を褒められることは多い。

さすがにペン習字を長年やっている人には適わないけど。

クセのある字なので教科書通りの字ではないが、上手と言われることは多々ある。


 面接官A「これは即戦力が期待できますねぇ」

 面接官B「んん??プロボクサーだったんですか?」

 俺「ええ、一応プロでやってました」


実は高校生の時にプロになっており、その事を履歴書に書いていた。

だが試合中に怪我をして引退を余儀なくされたので、実績があまりない。


本来であれば

「高校生プロ!KOの山を築く!10年に一人の天才現る!」

「久々に世界を狙える逸材!」


と、新聞の一面を飾ってもおかしくなかったんだけど。

どこをどう間違えたか、そうはならなかった。

夢は大きく世界チャンピオン!と意気込んでいた時期が懐かしい。


 面接官A「んー、とてもそうは見えないねぇ」

 面接官B「んー、ホントかなぁ?」


二人ともニヤニヤしながら人を小馬鹿にしたような目で見ている。

初対面の相手に向かってさすがに失礼だろう。

どうやら「派遣」という事で見下されているようだ。

いい年した大人が人に対してそんな態度をするのは嘆かわしい。

まぁでもそもそも人と思ってなければそういう態度もアリか・・。


「なんなら試してみます?」とは言えるはずもなく


 俺「ハハハ、、、まぁ遠い昔の事ですから」


俺もいい大人なので、そんな事を言って怒りの感情をごまかした。


実際にやってもよかったのだが、老人二人を血祭りに上げてしまう。

そして俺はめでたく逮捕となるわけだ。

そんなのは人生の予定に無いし、殴った方も手は痛い。

すぐ怒らないように生きて行こうと決めたあの日に誓って感情を抑えた。


面接終了。

どうやら採用されたらしい。

まぁこの会社の仕事に必要な資格と実務経験があるので当然と言えば当然か。


ちょっと気分を害した受け答えがあったが、ここまでは概ね予定通りだ。

実際に現場で働くのは1ヵ月後。

他にも別会社の派遣社員を受け入れたらしく、その人達と合同で入社する。


その日から非常識との戦いの日々が始まる事は、この時点で薄々感じていた。

それは物の見事に的中する。

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