第4話 業務2日目で放置プレイ
先日あった出来事にもめげず、2日目の朝を迎えた。
体操と朝礼を終え、各自作業に取り掛かる。
今日の指示を聞いていないので、H田GLに聞きに行く。
別部署や設備等の案内をしてくれるという。
案内の途中で車の話になって、若い頃は俺と同じ車に乗っていたらしい。
そう、AE86である。
H田GLのAE86がターボ仕様との事で、それについても色々と話しをした。
タービンはどこのやつ?ブースト圧は?ピストンは?ブロックは?とかね。
マニアックな話が出来てー嬉しいなー。
だが、俺は自分に対して無条件で笑顔を見せる人は信用しない。絶対にだ。
必ず何か裏があるに違いない。
ちなみに俺の趣味はドリフト。この時点で大体の車好きな人とは話が合わない。
車好きと言っても色々いるのである。
世間ではドリフトに対して悪いイメージしかないし、鼻で笑われたりもする。
しかし、車の動きを良くわかっていなければ到底出来ない芸当。
基本的に運転に関してはとても上手な部類に入るのだ。
それをやる必要は全く無いと言われればそれまでだが、そこに楽しさを見出せた者だけが感覚を共有出来る。
メリットは危険回避の一言に尽きるだろう。
とっさのアクシデントでも慌てずパニくらず車を適切にコントロール出来る。
結果、自身や他人の命を失わずに済む事だってあるかもしれない。
大事な車を壊さなくて済むかもしれない。
今はドリフトで飯が食える。賞金が出る大会も頻繁にやっている。
笑いものにされる時代は終わったのだ。
話を戻そう。
2時間ほどで案内は終了。
H田GL「じゃあ今日は実際に作業して貰おうかな」
見てるだけだと正直退屈だし、仕事内容はわかるので快諾。
外の駐車場から車を持ってきて2柱リフトにセッティングする。
H田GL「この車からエンジン降ろしといて下さい」
H田GL「じゃ、お願いしますねー」
そういうと足早にどっかに消えた。
ポツンと一人取り残される俺。
えっ。工具とかどうすんのこれ。何も無いんだけど。
車いじりは工具だ。経験も重要だがまず工具が無けりゃ話にならん。
どんなに知識があっても素手でボルトは取れない。
それより研修は?一日で終わりなのか?
色々と疑問があるが、まぁやってやれなくはないので作業開始。
しかし工具が無い。どうしましょう。
派遣を雇うんならそれ用の工具を用意しときゃいいのに。
何をさせる気でいるのか。
キョロキョロしていると近くで作業していたN江君が救いの手を差し伸べてくれた。
N江君「僕の工具使っていいですよー」
N江君「いきなりこれやるとか大変っすね」
N江君「僕はさっぱりわからないんで手伝えないですけど」
手伝ってはくれないのね。でも非常にありがたい。
彼にも仕事がある。借りれるだけでもヨシとしよう。
ずっと一人で作業し、ようやく終わった。
本当に誰も来ないし、見に来すらしない。どうなってんだ。
これが派遣にさせる仕事なのだろうか。
もっとこう社員の補助的な役割でいいのではないだろうか。
好きな仕事だからやるのはいい。ただ派遣に丸投げはイカン。
一応終わりの報告をしたら
H田GL[お疲れさーん。明日も頼むねー」
なんともお気楽である。
2日目にしてまさかの放置プレイだったが、とりあえずはも少し続けようと思った。
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