第10話 チーム解散
季節は冬。この会社に派遣されてもう4ヶ月。
地元北海道と違ってこちらは雪が積もらないので通勤が楽だ。
雪降ってもアイスバーンにならないし、夏タイヤで走れちゃう。
しかしながらドリフト中年としては少し寂しくもある。
雪の上等の低ミュー路を思うがままにコントロール出来てこそ一流。
雪ドリが出来なくて残念である。楽しいのに。
雪一面の景色を懐かしみながら会社へ向かう。
朝、仕事を始める前に突然こう言われた。
H田GL「今月いっぱいでK部さんとK藤君は終わりです」
俺「???」
H田GL「えー元の部署に戻ってもらいます」
H田GL「また一人に戻るけど、早急になんとかするから宜しく」
俺「あー・・・はい」
1週間後だ。まぁお二人が戻りたい気持ちは痛いほどわかる。
確実に長時間残業確定の職場に何ヶ月も放り込まれりゃ誰だった嫌になるさ。
現に二人は連日23時以上の残業をしていた。毎日5~6時間残業。
しかし俺は定時かやったとしても残業は1時間。
大多数の人は「俺も残業すればみんなもっと早く帰れるのでは?」と思うだろう。
しかし間違えないで頂きたい。
そもそも連日5時間も6時間も残業になってる状態がおかしい。
何度も書くが、残業というのはあらかじめ決まっている事柄ではない。
大手自動車メーカーのライン作業のように確定しているところもあるが
それは年間の生産台数と稼働時間から算出したもの。きちんとした計画に基づいて実行されているのである。そして交代制なので2時間以上はやらない。
それに比べてこの会社は行き当たりばったりのその場しのぎな計画だ。
とりあえず人動かせばなんとかなるだろ的な。
ただし、自分たちは詰め所に篭って何もしない。コーヒー飲んでる。
挙句の果てに無謀な予定を立ててる張本人が定時か7時で帰ってしまう。
まぁ出てきたところで何も出来ないので役には立たないのだが。
本来であればそういった連中に怒りや不満を向けるのが筋なんだが、現時点では何故だか俺に向いている。全くもって遺憾である。
会社側としては不満の矛先を弱者に向けて、自分達の愚行を社員の目から逸らしたいのだろう。
その思惑通り社員のみなさんはまんまと引っかかっていた。
ただ一人を除いては。
後で聞いた話だと「なんで派遣が先に帰るんだ!もっと働かせろ!バカじゃねぇの?」等と色々言われていたそうだ。
俺はそういうの全然気にならないので、何も知らずに毎日楽しく働いていた。
ほぼ個人作業なので他者との連携が取れなくても仕事はスムーズにいく。
俺のような偏屈には願っても無い職場だ。
二人がそれぞれの職場に戻る日が来た。チーム解散である
しかし当然のように残業させられていた。俺は定時で帰る。
せっせと働く二人を横目に「お先にー」と言葉にして、心の中では「K部さん、K藤君本、当にお疲れ様。この先呼ばれても二度と来ないように。」と呟きながら会社を後にした。
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