第11話 そしてまた一人になって呼び出し
二人が去って、俺はまた一人になった。しかし問題は無い。
仕事は相変わらず長時間残業確定なだけ割り振られているが、どうにか理由をつけて定時で帰っていた。
そこでまた呼び出しが来る。これ何回目だ。いい加減にして欲しい。
とりあえず会議室へ。
H田GL「周りが遅くまでやってるのに、一人だけ定時で帰るのはどうなの?」
俺「え?それは残業しろっていう強制ですか?」
H田GL「いやいやそうじゃなくて、雰囲気悪くなるでしょ」
俺「雰囲気???」
どうやら俺が定時で帰ることによって社員から不満が出ているらしい。
それって俺のせいではなく、会社の体制が悪いからだと思うんだが。
どうにかして残業させようとしてきやがる。
H田GL「やっぱ職場で一人だけそういうのだとまずいんだよねぇ」
俺「何がどうまずいんです?」
H田GL「みんながやってるからねぇ。同じようにやらないと」
俺「あのぉ、一つ言ってもいいですか?」
H田GL「はい?」
今まで隠していたわけではないが自分の現状を言う事にした。
俺「あのですね。実は、俺はもう働かなくても暮らしていけるんです」
H田GL「ん???」
俺「残りの人生暮らしていくだけのお金あるんで働かなくてもいいんです」
H田GL「え。そうなの?」
俺「ええ。そうです。だからこの会社で残業するメリットが全く無いんです」
H田GL「ほえーそうだったんだ。いくら持ってるの?」
俺「詳しくは言わないですけど、一応億はありますね」
H田GL「ほおおーそうなんだ。じゃ何でここに来てるの?」
俺「ここの仕事の内容が大好きなので」
H田GL「暇潰し?」
俺「そういう訳じゃないですが、少しでもお役に立てればと思いまして」
俺「ただし定時まで。やっても残業1時間」
俺「面接での契約はそういう事でしたよ」
H田GL「そうだったんだ。それならまぁ残業させれないなぁ」
H田GL「んーそうかそうか。なるほど」
こんな内容のやりとりをしたはず。やっとわかって貰えたようで良かった。
ホントはこういうのは言いたくないのだが仕方が無い。
この事からわかるのは、社員や派遣をただひたすら酷使するという考え方だ。
特に派遣に対しては社会的弱者としてのっけからバカにしてきている。
俺から言わせるとブラック企業で無意味に威張っている輩が社会的弱者に思える。
人間的に見てもそうだろう。
人生において勝ち組負け組があるとすれば、心に余裕があるか無いかだと思う。
ここの上層部の人達はお察しの通り。
しかし、お金があると心に余裕が出来る。世の中大抵はお金でカタがつけられる。
俺は持ってるので超余裕だ。だからこんなズケズケと派遣先の上司に物が言える。
ぶっちゃけこれで解雇になっても全く問題が無い。
ただ、派遣でここの仕事内容は滅多にお目にかかれない。というか他には無い。
好きな仕事が出来なくなるというのはかなり残念ではあるが。
まぁとにもかくにも理解して貰えたようで何よりだ。
それからは呼び出しは一切無くなったとさ。めでたしめでたし。
季節は4月。
新入社員がこの部署にも何名か配属されるらしい。
前途有望な若者が理不尽に潰されていくのを俺は悲しい気持ちで見る事になる。
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