第12話 新入社員と茶番劇
桜の舞い散る季節。
何も知らない若者が夢と希望を抱いてこのブラック企業にやってくる。
そして新しい派遣社員もやってくるらしい。
今現在このグループに派遣は俺一人。違うグループにもう一人。
ちょっと離れた違う部署には大勢いる。
違うグループと部署の人は同じ派遣会社で俺一人だけ別の派遣会社だ。
昔はうちの派遣会社の人間も沢山いたらしいのだが、人間関係の酷さに撤退したそうだ。そんなところに俺を送り込むとは、悪魔の所業とも言えよう。
ただ、俺は人間関係にバカなので全く気にならないというか動じない。
まぁ適材適所といったところか。
朝会社に行くとKグループという徒歩2分ほどのところにある工場に皆集められた。
どうやら人事異動と会社の方針と新入社員の紹介をするらしい。
ぐだぐだと下らない話を聞きながら立ったまま寝ようと試みるもうまくいかない。
社長や幹部連中の意味不明な話を聞いて20分ほど経った頃、新入社員の紹介が始まった。みな緊張の面持ちでいる。
「~~専門学校卒業、~~~~~(名前)です!よろしくお願いします!」
この年の新入社員でこの部署に配属されるのは全部で6人だったか。
各自精一杯の大きな声を出して顔真っ赤にしながらこんな挨拶をしている。
おそらく入社後のわずかな研修期間でこうやって挨拶しろと言われたのだろう。
こういうのを強制的にやらせるのはどうかと思う。
中には人前で何かをするのが嫌な人だっていると思うのだが。
なんか凄く時代遅れな気がして新入社員が可哀想に思えてきた。
これから彼らには過酷な試練が待ち受けていると思うと父ちゃん涙出てくらぁ。
一通り紹介が終わるとお次は人事異動の発表だ。
派遣の身としてはどうでもいい話。ぶっちゃけこういう集まりも全く意味が無い。
こんなのプリントして各社員に配ればいい話だし、時間のムダ。
このムダな時間を作業に当てて少しでも生産性と効率を上げようと言う考えには至らないものかと考えてしまう。
人事異動で他地域の工場から幹部待遇で来た人、元請の天下りで来た人。
数名いて何か話していたようだが、作業員との絡みは全く無いのだ。
それがわかっているのに挨拶とか無意味としか思えない。
しかもこの時点でみな40分以上立ちっぱなし。仕事する前から体に負担がかかる。
要するにまぁ、上層部の自己満足なわけだ。とにかくうわべだけで中身スッカラカンなのである。
最後に専務の挨拶だ。
この会社は同族経営で専務もその一人。なぜか社長よりも偉そうにしている。
ありがたーーいお話が始まりました。
言ってる事は綺麗ごとで正しい。しかしやってる事は極悪非道。
ここまで色々食い違ってる会社も珍しく思う。
ふと新入社員に目をやると、みなダルそうにしている。
緊張とわけのわからない話でまいっているようだ。
上層部はご満悦の様子、作業員は暗い顔でくたびれた様子。
小1時間に及ぶ茶番劇が終わり、各自自分の持ち場へと戻っていく。
今日も無意味で強制的残業が待っている。俺はやらないけど。
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