第7話 会社についてわかった事
先日の「帰り際呼び出し事件」の後は比較的残業の少ない時期に突入した。
とはいうものの、皆は21時頃までやっている。いや、やらされている。
俺の感覚では3時間でも長時間残業なのだが、この会社では早く帰れる方。
もう狂ってるとしか言いようが無い。
誰だって残業は嫌なのものだ。
だがごく稀に残業大好き!という連中もいる。これが非常に厄介。
車関連業界というのはとにかく低賃金。
残業でもしなけりゃまともな生活なんてできっこない。
周囲からは高給取りと思われているようだが、全くそんな事は無い。
例を言えば、ディーラーで10年勤めても手取り20万はいかない。
残業40時間やってようやく超えるか超えないか。
自動車整備士って国家資格なのよね。それにも関わらずこの惨状である。
その背景には「好きな仕事やってるから給料出るだけありがたく思え」
というのがあるらしい。
こんなのでは家族を養うことすらままならない。
なので、残業でもして稼がないとどうにもならないのである。
社員や派遣を残業させるのにぴったりの理由。
もっと高くてもいいと思うんだけどなぁ。
この会社も例に漏れずだ。まぎれもないブラック企業。
こういう会社では正論も常識も通用しない。
そんな事を言おうものなら社員なら孤立し、派遣はクビ。
みんな上層部の顔色を伺いながら仕事している。そんなので楽しいのだろうか?
「下からの意見や要望は取り入れる」「楽しい職場作り」「みんな一丸となって」
言ってる事はご立派だが、何一つ反映されていない。
現場の状況をよく知らない、車もロクにいじった事も無い連中が色々決めている。
「後は現場が何とかするだろ」等とのたまう始末。
みんな一丸もへったくれもない。
ここまで意見が食い違ってて効率的な作業が出来るはずも無く、連日残業まみれ。
日本の企業の悪い部分を凝縮したような会社である。
上層部が威張り散らし、現場は萎縮してしまっているのが現状。
そこで労働組合という組織があるのだが、困った事に全く機能していない。
本来は会社側が恐れる存在のハズなのに、完全に支配化に置かれている。
何故なら会社側の言いなりになる人達で構成されているからだ。
うーん、現場の作業員が不憫で仕方ない。可哀想すぎる。
大体1ヶ月ほどでここまでわかった。
ただ、派遣でこの内容の仕事は滅多に無いので辞めたりはしない。
というか辞められると困るらしい。ホントかどうかはわからんが。
今思えば2日目で無茶な業務をこなしてしまった事が、ムダに信頼を得たのだろう。
それが一番のミスだという事に、この時の俺はまだ気付いてなかった。
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