第6話 帰ろうとすると呼ばれる

しばらくの間は1~2時間ほど残業をした。

他のみんなは毎日5時間も6時間もやっている。

ある日アホらしくなって定時で帰ろうと日報を書き始めた瞬間呼び止められた。


 H田GL「ちょちょちょ。帰るの?」

 俺「ええ。用事があるもので」

 H田GL「それじゃ仕事終わらんて。ちょっとこっち来て」

 

事務所の隣にある会議室っぽい所に移動する。

H田GLが頭を抱えながらこう言った。


 H田GL「あんまり残業しないけど、残業をどう考えてる?」

 H田GL「どうせ帰ったって暇なんでしょ?皆残業してるよ?」

 H田GL「ならお金稼いだ方がいいんじゃない?んー?」


なんという滑稽な質問だろうか。というかものすごくバカにされている。

俺も頭を抱えた。

仕方ないのでそのへんの小学生でもわかるように説明する事にした。


 俺「えー、残業というのはあらかじめ決まっている事ではなく、突発的な仕事や何らかのアクシデント等で作業が滞り、定時を超えそうな場合にやむなくする事だと思います。社員であれば問答無用で残業させる事も出来ますが、俺はこの会社の社員じゃないので定時を超えての拘束は出来ません。したがって定時で帰っても何の問題も無いと思います」


 H田GL「・・・・・・・わかりました」

 H田GL「じゃー出来るような時はお願いしますね」


残念な事にこちらの真意は全く伝わらなかったようだ。


周りが残業してるから帰れない、申し訳ないから残業するというのは間違っている。

そもそもそうならないような計画を立てるのが上層部の役目。

「長時間残業=会社に貢献している」という風潮はおかしい。

俺が苦労してるんだからお前らも苦労しろという時代遅れの考え方。

はぁ、、なんとも嘆かわしい。悲しくなってくるね。


不思議な事にこの会社は定時になると事務所に人が沢山座るようになる。

ほんの数分前まで誰もいなかったのにだ。

定時で帰らせないようにするために無言の圧力をかけているのだろう。

勤怠表が事務所にあってそこで書こうものなら一気に注目を集める事になる。

そうやって事務所に入りずらい状況を作り出し、定時に帰らせないようにしている。

だが俺はどう思われても問題無いのでズカズカと入り勤怠表を書き定時で帰る。

帰り際に「お疲れ様でしたー」と言っても誰一人として返答無し。全員で無視。

俺も何も言わず帰ろうとしたが、挨拶は大人として礼儀なので言う事にした。

せめて自分だけでも一般的な常識は持っていたいものだ。


後にこの「事務所の雰囲気悪い問題」は解決する事になる。

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