第14話 レジェンド
長く生きているとレジェンド(人物)やミラクル(発言)に出くわす事が多々ある。
この会社においてもそれはあった。むしろ大体がレジェンドでありミラクル。
ただし「悪い意味で」という事を念頭に置いて頂ければありがたい。
中でもとびっきりのスーパーレジェンドをお披露目しよう。
俺がこの会社に来る以前からBグループにいたY内氏。
年の頃は30歳前後、背は確実に190以上はあろうかという大男。
声は低く渋い。勤務態度は好評で、何より仕事が出来る人物。
別の派遣会社ではあるが、ずいぶんとお世話になった。
要注意人物や気軽に話しかけてはいけない人等をこと細かに教わった。
この人から聞かなければ俺は殺人事件を起こしたかも知れない。
事前に色々知っておく事で大体は回避できるものである。
ある日、無遅刻無欠勤と評判だったY内氏が突然休んだ。
珍しいな~お疲れかな?などと呑気に思って帰宅。
PCを起動してネットでニュースを見る。
ちょっと気になる記事が目に飛び込んできたのでクリックした。
「工場に無断で侵入してシャワーを浴びた無職の男逮捕」
やれやれ、無職はやっぱロクな事しないんだな。
と思いつつ名前を見ると、Y内氏の名前がフルネームで晒されている。
「まじか」と声に出たのは言うまでもない。
なんとお見事、いやまさかの結末である。
記事を読む限りでは常習的にやっていたようだ。
何故そんな事を・・・なんてのは本人しかわからない事だろう。
そういう事をする人だったんだなと思うしかない。
次の日派遣の担当に確認したところ、本人で間違いないそうだ。
俺の人生においても逮捕された人と関わったのはこれが初めてだ。
だからといって別になんて事はなく日常は過ぎていく。
なかなかの好青年だったのにこうしてネタになってしまうのは残念。
今頃どうしているのだろうか。
次はレベルアップして民家でシャワーなんて事になってなければいいのだが。
こうして不法侵入の記事にちょっと敏感にさせて、まごうことなきレジェンドの称号を得たY内氏は俺の前から姿を消した。
色々教えてくれた事に関しては今でも感謝している。合掌。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます