第2話 あんたがたどうせ暇なんだから

面接から1ヵ月後。他の派遣会社の人達との合同入社の日。

俺を含めて8人いた。

その中には彼氏彼女らしき人や夫婦らしき人も。

博多弁?で話してる人もいた。


会議室っぽいところに通されてしばし待つ。

そこにやって来たのは面接官Bだ。

相変わらずニヤニヤしながらこっちを見下している。


 面接官B「えー今からざっくりと会社の業務について説明しますー」


みな真剣な顔で説明を聞いている。


 面接官B「でーあるからして――――」

 面接官B「業務時間は―――」

 面接官B「休憩時間は―――」


面接官Bはめんどくさそうに嫌そうに淡々と話す。

何故俺はこんな派遣なんかの為に色々説明せねばならんのか?

という心の声が、集まった8人には十分すぎるほど伝わっていた。


やっぱりこの人変だなーと思っていた矢先、皆に激震が走る。


 面接官B「うちの会社は残業多いけど大丈夫?」

 面接官B「まぁ、あんたがたどうせ家帰っても暇なんでしょ?」

 面接官B「働いた方がお金もらえるし、まぁ頑張って下さい」


こういうのって思ってても言わないのが常識的だと思うのだが。

数年経った今でもこの言葉はハッキリと覚えている。

向かいに座ってる人が呆れた顔をしている。

隣の若い女の子は「このオッサン頭おかしいんじゃね?」みたいな表情で見ている。


隣の隣に座っていた博多弁の彼がスクっと立ち上がった。


 博多弁の彼「バッカじゃねーの?やってらんねー」


そう言うと座っていた椅子を蹴り飛ばし、足早に会議室を出て行った。

どうやら面接官Bの言葉は彼の逆鱗に触れたらしい。

 

 「仕事する前から辞めさせるとかどんだけー」


そこにいた全員がそう思ったハズだ。


出て行った彼を最初からいないかったかのような感じで面接官Bはまた話し出す。


 面接官B「―――以上で説明は終わりになります」

 面接官B「わからない事や細かい事は各々の配属先の人に聞いて下さい」

 面接官B「では時間になったら各部署に行って下さい。解散!」


解散!じゃなくて。

あんたの余計な一言で怒って出てった人の事どうにかしましょうよ。

んーこういう人が上にいる会社ってやっぱりアレだよな。

そう、ブラック企業ってやつだ。

ちょっと先行き不安になったが、好きな仕事なのでとりあえず帰らないでおいた。


午前中にそんなやりとりがあって、午後からは現場で研修に入る。

さぁ、現場で働いてるのはどんな人達だろうか?

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