第11回「オリジンズ?~ハリウッドは踊る~」
「オリジンズ?~ハリウッドは踊る~」
2023年 アメリカ
監督 フランキー・アンダーウォーター
あらすじ……ハリウッドの小さな映画スタジオ、ハイ・エクスプローシブ・エンターテイメント(通称HEE)は経営難に陥っていた。製作する映画が売れないのだ。技術も未熟、スタッフも未熟という状態で、社長のエヴァンスはハリウッドの大作映画を模倣した映画、モックバスターで稼ぐ事を思いつく。エヴァンスの目論見は見事成功を収め、HEEはパクリ映画でそれなりの軌道に乗っていき、ノウハウを身に着けて本業のオリジナル作品でも成功を収め始めていた。一方で大手映画配給会社、トリプルスターズはこうしたモックバスター作品を売り続けるHEEを目の敵にし、最終的につぶす事を画策していた。ある日、エヴァンスは盗作にあたるとしてトリプルスターズから訴えられてしまう。
[レビュー]
映画のジャンルとして確立した大作模倣映画、通称モックバスターを軸にして描く21世紀初頭のB級映画界隈の姿とそれを取り巻く人間模様を描き出したてんやわんやなコメディ映画。
監督のフランキー・アンダーウォーターはこの時点で監督作だけで39本も製作したベテランであるが、その活躍の場はソフトスルー映画やB級以下の映画と言ったもので、お世辞にも良いキャリアと言えなかったが、今作の封切り後は一転して彼の作品も再評価につながったという。
作品の内容は監督自身が過去に経験した大手配給会社とのトラブルを元にして製作されている。当時のモックバスター映画は、模倣こそなれどチープかつ低予算で、尚且つ本家の映画とは比較すらされないというパロディの粋を出ないものであったが、それでも大手の会社が目の敵にする事はあり、訴訟になったというケースもあると言われている。
しかしながら、そうしたチープ映画を撮り続けなければ経営もまずくなるという弱小の映画スタジオが持てる数少ない武器がこのモックバスターだったのも事実。今作ではそうしたモックバスター映画が作られていく過程がユーモアを交えて展開されており、こうした映画でも熱意と情熱をつぎ込んだ映画好きたちがいたという事実を教えてくれている。
後半では訴えられた主人公のエヴァンスが、何とかして法廷で勝つ為に知恵をしぼるという展開になり、一転してリーガルコメディとなるものの、ここでも笑いとユーモアがちゃんと展開されているし、大手配給会社の抱える問題、ひいては当時のハリウッドに蔓延していたオリジナリティの喪失を説いて行く物語に展開するのも見事である。また、創作界隈における「オリジナルを売りにする作品も、かつてどこかの誰かが書いていた物の真似事に過ぎない」「模倣と言っても作る側も苦労して作っている」というクリエイターたちの苦悩も描ききっている。
メッセージ性を含めて、映画を愛する者たちの熱意がこもった映画であるが、残念ながら興行的にはいまいちであったのが惜しい所か。それでも21世紀初頭の映画がどんなものだったのかを知るための指標となる、貴重な映画である。
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