第4回「エスケープ・フロム・アース」

「エスケープ・フロム・アース」

2035年 イギリス・ドイツ

監督 エリック・ヒルター


あらすじ……中国とアメリカとの間で武力衝突が発生、それを端にして世界大戦が勃発する。核兵器、さらには生物化学兵器まで使われた最悪の戦争が続く中、今度は遊星が世界へ接近し、地球が太陽系から弾き出されるという事実が判明する。人類はまさに風前の灯であったが、これに備えるために世界各国は地球脱出のプランを練っていた、それは地球の代わりに居座る遊星へ移住するという計画だった。しかし依然として世界大戦は続いたままで、計画は難航していく。一方で脱出計画を立てられない小国や敗戦国はただ黙って滅びるのを待つのみになっていたが、彼らにもある秘策があった……


[レビュー]

 今作の公開から半世紀以上昔に作られたSF映画「地球最後の日」を原案に再構成したSFディザスター超大作。宇宙開発の発展により、他惑星への移動も夢物語ではなくなった時代の地球滅亡SFだが、その内容はあまりにも滑稽で壮絶である。当初はリメイク映画として企画がスタートしたが、元からあまりにかけ離れてしまったので最終的に今作は「再構成」という形で公開された。


 作品の根幹にあるテーマはズバリ「人類ってしょうがねえなあ」という諦めの心。人類誕生から今にいたるまで、人類は壮絶な争いと殺し合いの歴史を重ねてきた。そんなしょうもない種族が果たして団結して危機に立ち向かえるのか?そんなもん出来るわけがない!という諦めを最初から最後まで描ききった作品でもある。


 そもそも世界大戦で死に掛け地球はボロボロなのに、さらにやってきた遊星のせいで地球は太陽系からサヨナラ確定、生物みな滅亡という恐ろしい未来を突き付けられているが、ここまで来ても団結できない人類の皆様方には「しょうもねえなあ」という気持ちで一杯になると同時に、その愚かさが滑稽ですらあるという黒いユーモアを孕んでいる。


 移住先の星にあいつらが行くのが気にくわねえ!という理由で地球脱出計画を妨害しあう先進国、そして見捨てられるその国の貧乏人や大多数の国民という構図や、各国の宇宙センターを爆撃で破壊しまくるヤケクソな作戦、暴徒と化した民衆が戦争で荒廃した廃墟で政府軍と泥沼の戦いを行う様相など、黙示録映画史でもトップクラスの泥試合が壮絶なパニック描写で展開されていく様子は圧巻の一言。


 サボタージュや戦闘で先進国の宇宙船はすべて破壊されてしまい、残るは中国製の宇宙船ただ1機。定員50名、打ちあがるかも怪しい急造の宇宙船へ殺到する人類の生き残りが壮絶な地球からの脱出を賭けて戦闘を繰り広げるクライマックスは見ていて楽しくもなる一方で、俺たち人類ってこんなんでいいのか……という後ろめたさすら感じてしまう。


 しかし、結局は団結した負け組たる第三世界の国々が破壊された宇宙船を寄せ集めて最後の最後で秘密裏に脱出に成功、えらばられた箱舟への乗船者は国も人種も超えて選出された前途溢れる若者たち。そして最後の宇宙船を巡って争っていた人類はついに地球ごと銀河の彼方へと弾き飛ばされ、大災害で命を落としていく……というラストの対比がじつに人間賛歌に溢れる物で思いのほか感動したのは意外だった。そう、ここらへんは真面目に作られている作品なのだ。


 ただ、人類の泥沼の戦いにフォーカスを当てた事で公開当時はSFディザスターと言うよりは完全な戦争アクション超大作になってしまい、本筋はまったく評価されないどころか映画のオマケ要素程度になってしまったのは残念である。監督のエリック・ヒルターは後年にインタビューで「戦闘ばかりに力を入れてしまった」と反省している。


 のちにTVドラマで後日談となる「ニューワールド・イヤーZERO」が全3シーズンで製作されているが、こちらはマスターが紛失してしまい現在お目にかかれる事は出来ない。こちらは1から文明を築きあげようとする新世代人類と、最後の最後でちゃっかり脱出に成功した旧世代人類が対立するというサバイバルもの。こちらが見れる日もいつかは来ればいいのだが……

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