第7回「ナチス・フロム・アビス」

「ナチス・フロム・アビス」

2020年 アメリカ

監督 ジョナサン・マッケルン


あらすじ……バミューダ海域を航行していたアメリカの客船が消息を絶ち、捜索隊が結成され、フォスター中尉が乗った海軍のイージス艦がバミューダ海域へと向かう、生存者を発見したフォスターだったが、「カギ十字が……」と言い残して生存者は絶命してしまう。間もなくして、イージス艦に謎の巨大物体が接近、僚艦が巨大物体に攻撃され沈没する。辛くも逃げ出したフォスターは、海中からハーケンクロイツを書いた巨大潜水艦が現れるのを目撃する。それは1945年、ナチス・ドイツ軍は敗北が予期して海底にナチスの秘密基地を建設し、数十年以上の時を経て逆襲に転じた海底ナチス軍だった!海底ナチスの軍勢がマイアミへと進撃を始める中、米軍は総力を結集して海底ナチス軍へと立ち向かうが……


[レビュー]

 月や地底からナチスが攻めてくる映画が作られ、何とかして三番、四番煎じを作れないかと業を煮やした映画クリエイターが「そうだ、海底からナチスが攻めてくるのはやってないんじゃないか?」という浅はかな理由で作ってしまった低予算アクション映画。資料映像の流用や、安っぽい合成に目も当てられないCGを多用して作られた映画であり、その内容は非常にゆるい。


 まず何でナチスが数十年間も海底に隠居していたのか、その間一体何をやっていたのか、どうやって海底で生活できていたのか、そういった説明は一切していないし、なぜヒトラーやナチス高官たちが全く老けておらず存命なのか。そうした疑問に対して答えるつもりは一切なく、ただ単にと「ナチスのテクノロジーが凄いから」という言葉で片付けられるこの潔さ!突っ込んだら負けだというクリエイターたちの開き直りがいっそ清々しく思える。


 海底ナチス軍団は実に独創的な方法と手段でアメリカを攻撃してくる。島ほどの大きさがある巨大な潜水艦や、海底でも陸上でも自由自在に動けるナチスの潜水スーツ(気圧に関する説明や理付けは一切なし)、さらにナチスの手で改良された生物兵器ナチ・シャークにナチ・オクトパス!それらが大挙してマイアミへ襲い掛かるのだが……なんでよりよにってマイアミなんだ?ニューヨークとかワシントンとかもっと良い侵攻目標あるだろ普通。


 ハーケンクロイツを付けた半メカのナチ・シャークに跨ったナチの海底兵士がマイアミのビーチで水着の美女を追い掛け回すビジュアルをやりたいがために作られたような映画であるが、それ以外は雑もいいところだ。イージス艦が登場する序盤から中盤の初めまではともかく、後半になると浜辺で俳優たちがただ銃を撃ってるだけのショボい戦闘シーンが連続する。


 最後はナチスの誇る超巨大潜水艦VSアメリカ軍の爆撃機という戦いとド迫力の爆発が展開されるものの、相変わらずチープなCGや1mmも似せる気の無いナチス高官たちがあわてふためている光景を眺め、主人公がキメ台詞を吐いて終わるという身も蓋も無い終わり方だ。


 監督のジョナサン・マッケルンのデビュー作であったが、このしょうもないバカ映画を作りつつも、同期間中に後のホラー映画「ナイトメアビレッジ」シリーズの脚本を執筆したという逸話があり、今作で端役を勤めたアーロン・ディーンの素質を見抜き、主役に抜擢し大ブレイクさせたという後年の逸話を考えれば、この映画の存在意義も随分と意味があるのだろう。

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