第6回「外道たちの午後」

「外道たちの午後」

2019年 日本映画

監督 深崎恭太


あらすじ……かつて暴力団のヒットマンとして数多くの敵を暗殺してきた凄腕の殺し屋、欽二。「鬼のキンジ」と恐れられた男は、血で血を洗う抗争の果てに戦う事を止め、人を殺める事に疑問を持ち、裏社会の仕事から引退し、堅気の生活を送る事を決めた。時は流れ、今では幸せな家庭を築き、欽二は老年へとさしかかろうとしていた。そんな矢先に、東京で就職した息子の洋一が死亡したという知らせが舞い込む。絶望に打ちひしがれる欽二だったが、追い討ちをかけるように息子は極悪非道のブラック企業に虐げられ、過労死したという事実を知ってしまう。相手は堅気でも何でもない、外道の悪でしかないと悟った欽二は、再び裏社会の人間たちの力を借りてブラック企業への復讐へと乗り出す。裁判や言葉でなく、暴力という武器のみを頼りに。


[レビュー]

 日本の映画に、日本の犯罪組織であるヤクザを題材とした極道映画というものがある。日本では需要があり、毎年のように作られる映画であり、劇場で公開せずにそのまま販売するソフトスルー映画(日本ではVシネと呼ばれる)で興隆したジャンルだ。そこへ、老いた父親の復讐劇と当時の社会問題を織り込んだ革新的なリベンジアクション映画である。


 当時の日本では「働きすぎて死亡する」という事例が数多く存在した。劣悪な労働環境で、文字通り奴隷のように働かされて使いつぶされた挙句に死ぬという、22世紀の今から見れば到底考えられないような事が行われていたのである。企業が倫理を捨て、利益を求める為に労働者を使いつぶして殺すという社会だったのだ。


 主人公の息子も、そうした会社で洗脳され盲目的に働き、そして過労により命を落としたのだった。だが、主人公の憤りは慰謝料や企業の謝罪程度では収まらない。金や頭を下げた所で息子の命は帰らない、となれば残るは暴力の復讐しかない。


 主人公が復讐を決める映画中盤からは陰湿なバイオレンスがひたすら続いていく。主人公の武器は縦横無尽だ。60代という高齢ながらも、仕込み杖、毒物、ナイフ、ワイヤー、消火器、銃など様々な武器を駆使してターゲットなる会社の関係者を殺害していく。さらに、復讐を遂行するための地道な調査、そして当事者たちの罪の自白をさせるための拷問が延々と続いていく。


 殺される会社の関係者はまさに唾棄すべき者達であり、タイトルの「外道」に相応しい者達が、のうのうと罪を逃れて平然としている様子がありありと伝わっている。息子の上司、ストレスを与え続けた同僚、無茶苦茶な要求を出す重役、そして人を殺す環境を作りながら「いくら欲しい?」と金で解決を図ろうとする社長。倫理を失ったケダモノたちを前に暴力が炸裂する瞬間、観客は復讐の是非や命の重さなど忘れて拍手喝采をしてしまうだろう。


 最後は被害者の顔で警察を頼った社長と、襲い掛かる警察特殊部隊を前に主人公が追い詰められていき、警察を巻き込んだ壮絶な戦いが展開される。ラストの銃撃戦は日本のアクション映画史に歴史を刻むほどの壮大な銃声のシンフォニーへと仕上がっている。家族の死によって、距離を置いた闇へもう一度飛び込まざるを得なかった男の哀愁、壮絶なる復讐とのその結末……全てが絡み合い、決着へともつれ込むラストは泣ける事必至だ。

 重たく、そして暗い映画だが、それを受け止めて見る価値は十分あるバイオレンス映画である。

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