第10回「キリング・マシーン アポカリプス」

「キリング・マシーン アポカリプス」

2027年 アメリカ

監督 マイク・レブンフィールド


あらすじ……西暦2035年。AIを搭載した完全自立無人兵器が跋扈する世界、米軍の無人戦闘兵器軍団が実用化され、その規模を拡大するプランが実行に移される。かくして無人兵器軍団が戦場へ投入されていくが、テロリストのサイバー攻撃を受けて無人兵器軍団にとある細工が施されてしまう。無人兵器軍団との演習を行っていたサイクス軍曹率いるレンジャー部隊は、突如として無人兵器軍団が暴走を始め、仲間たちを殺害し始める光景に遭遇する。命からがら演習地帯から脱出したサイクス軍曹だったが、アメリカ全土で無人兵器が暴走を始めたという報告が耳に入る。一方で、テロリストのサイバー攻撃について調査をしていたFBI捜査官のライリーは、この殺戮を裏で操っているテロリストがアメリカ国内に潜伏しているという情報を掴む。合衆国の崩壊が刻一刻と迫る中、ライリーと手を組んだサイクス軍曹は無人兵器の攻撃で戦場と化したロサンゼルスで姿無きテロリストを追っていくが……


[レビュー]


 公開当時、完全自立型無人兵器の実用に成功のニュースが話題となり、一部の軍隊で運用され始めた際に「これは人類にとって脅威ではないのか?」というテーマの元に作られたSFパニックスリラー映画である。本来なら高度に管理されている筈の無人兵器が、人を無差別に襲い始め、国を守るためのシステムが一変して大量破壊兵器として一般市民に牙を向くというプロットは当時大きな波紋を呼んだ。当時のアメリカ軍が「このような事態は絶対に起こり得ない」と再三にわたって公式声明を発表した程だから、大変な騒ぎだったのだろう。


 とはいえ、AIの管理プログラムや安全措置が徹底された現在においては非常にチープな映画に仕上がっているのは否めない。まずテロリストがハッキングし全ての無人兵器を暴走させるというのもあり得ないし、しかも無人兵器が暴走して殺戮を始める理由が「テロリストがAIに対して「地球にとって一番有害な存在を排除せよ」と命令したら人類を殺し始めた」という物であるし、無人兵器の管理システムが非常におざなりという点もかなり気になる。この点に関しては当時の想像が現実に追いついてなかった事の証左だろう。


 パニック描写やアクションは当時の平均水準程度。人型汎用歩行無人兵器が跋扈し、手当たり次第に人間をぶっ殺し町を破壊していく描写は圧巻だが、あれだけバリエーション豊かな無人兵器を冒頭で紹介しておきながら、登場するのはそいつらだけというのは映画として物足りないと言った所か。また、テロリストは実際に存在せず、軍隊が開発したAIが自我に目覚めて勝手に判断を下して人類殲滅を計画したというオチに関しても月並みで、過去のロボットの反乱を題材にした作品の単純な焼き増しに終わってしまった点は月日が流れた現在から見ても非常に微妙と言わざるを得ない。実際に作品の盗用疑惑も出てきたほどだ。


 とはいえ、軍とFBIという出自の異なる2人の男が共闘しながら敵を追っていくというバディ・ムービーのツボは抑えてあるし、陽気なFBI捜査官と悲観的で陰気な軍人という対比ある変わったキャラクターの掛け合いなど、娯楽作としての見所はちゃんと押さえてあるのはうれしい所だ。だが、監督のマイク・レブンフィールドは今作の興行収入があんまりだった事で監督後に映画界から干されてしまい、動画配信サイト向けの小さな映像企画を担当した後に業界を去ってしまった。出すタイミングが微妙だったのがとても惜しい作品である。

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