概要
70歳になった高齢者は、「老齢ビザ」を取得していない限り、それ以上生きることは許されない。
しかし、老齢ビザを取得できるのは、ほんの一握りの富裕層に限られている。
そんな中、主人公・荒島亘の祖母である、元気で毒舌で姉御肌な肝っ玉ばあちゃん・幾子ばあちゃんも「定年」を迎えようとしていた――
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!随所に金言が散らばる、「人生とは?」を考えさせる逸品です。
完成度の高い短編です。
深刻なテーマを、カラっとした性格の毒突き婆さんを主役に添える事で、ジメジメした雰囲気を一掃しています。
そして、随所に金言を散りばめています。作者はお幾つくらいの方なのでしょうか?人生なんて長く生きれば充実するというものでもないでしょう。もし、作者が若いならば、大変ご苦労をされた。でも、振り返ってみると、骨太の人生を歩んこられた方だとお見受けします。
先程、深海映さんの「ロボットに育てられた少女」に星3つを付けたばかりで、立て続けに、短編には星MAX2つの信条を反故にしてしまいました。
皆さん、上手いですね〜。短編の可能性というものを感じた1日でした。 - ★★ Very Good!!こうなりたくなかったら……。
人口爆発と食糧危機が心配されていた時代の『ソイレント・グリーン』や『定年食』よりはマシになりましたが、人的資源の劣化は如何ともし難い。
私が百才まで生きたとしても、ちょうどその頃人口の4割が高齢者となり、私のような虚弱者は一番有難がってもらえない(苦笑)。この作品そのままのようにはならずとも、自然・社会環境が悪化した場合には、助けきれずに犠牲となる恐れが増えてしまうでしょう。
この問題への対策も含め、①物的資源(資源枯渇・環境破壊)②人的資源(能力・資質低下)③経済・社会(急速な景気変動や格差拡大)の持続可能性を高めて、地球というひとつの空間的限界に到達した人類文明の、時間的な持続を図…続きを読む - ★★★ Excellent!!!幾子ばあちゃんの生き様に憧れる
70年で人生の「定年」を迎える。
少子高齢社会となった日本において、これから本当に起こりうるかもしれないテーマを扱った名作短編です。
作中の幾子ばあちゃんの生き様や名言は人生の教訓になります。
それだけでも読む価値充分。
元気で闊達で、毒舌だが寛容でもある幾子ばあちゃん。
そして「定年」を迎えるときには、皆が惜しんでくれるくらいのお人柄。
こんなおばあちゃんが近くにいてくれたらなと思うとともに、そんな愛される人間が強制的に人生の終止符を迫られる世界(これは現実化するかもしれない)を風刺した作品で、最後は余韻を残してくれます。
おすすめです。★3つでは足りないくらいです。 - ★★ Very Good!!生き続けることに意味があるのか。
藤子・F・不二雄先生のSF短編『定年退食』を思い出す傑作でした。
——「この世界はね、続けていれば必ず成功するようになっているの。けど問題は、間に合うかどうか、なのよね」
——「だけどね、人生は限られてるんだ。どっちにしろ、私の時間はいつか尽きる」
これはこの作品の中で印象に残った台詞です。しかし、私情を入れるとすれば、僕は病気のような事態にならない限り、制限時間なんて無いと思っています。人間には常に成長の余地がある。ならば、元気なうちは幾つになっても挑戦していたい。「お前ら、そんな人生で満足か? 俺は、嫌だね……」と。
それでも、病気に耐え、介護などのため、若い世代に負担をかけてまで…続きを読む - ★★★ Excellent!!!現代社会の問題を痛烈に風刺した快作
すごすぎる…え、本気でこれすごくないですか?
高齢社会の問題点を逆手にとって、これほどまで命の価値について考えさせられるとは思いませんでした。
正直、僕も長生きしすぎる高齢社会に危機感を持っています。
すぐ死ねとは言いませんが、ほどほどのところで老人には往生してもらわないと、とてもお年寄り全員を養えないのが現実です。
そちらにばかりお金がかかってしまい、若い世代が苦しみ、子供を産めない世の中になっているのは純然たる事実です。このままでは国が立ち行かなくなる。すでにそうなりかけている。老害、という言葉がずいぶん身近になりました。
その中で、いかにやりくりするのか。
安楽死や尊厳死の問題とも…続きを読む