◇ 七色のあじさいたち ◇

 僕はこれまでに現れた、君の中の人格について考えてみた。基本人格は伊達侑子だて ゆうこという女性だが、ずっと眠らされているという。


 ◇ 桃華(ももか)二十代後半 ◇

侑子の思春期に抑圧されたストレスが原因で現れた最初の人格。自由奔放でセックスが好き、下品で本能剥きだしの女。本来の侑子と正反対の性格である。


 ◆ 魔亜沙(まあさ)年齢不詳 ◆

侑子の怒りや憎しみなど、負の感情が生みだした人格。生に対する執着が強く、自殺しそうな基本人格の侑子を無理やり眠らせている。ピンチになると出てきて超人的パワーで相手を攻撃する、凶暴で冷酷な人格である。他の人格が逆らわないように、わざと自傷行為をする。


 ◇ 青羅(せいら)三十代前半 ◇

ヴェネツィアで生まれた人格である。語学力が優れていて、頭脳明晰、計算高く、お金に執着が強い。クールなキャリアウーマンである。伊達家の財産運営を担当している。


 ◆ 真亜子(まあこ)侑子と同年齢 ◆

基本人格が深層で眠らされていので、侑子の代わりに生まれてきた人格。一番、侑子自身の性格に近い、平穏な状態では彼女が侑子の代わりに人格たちをコントロールしている。優しく上品な性格だが、罪の意識から自分の身体をけがそうとする自虐的な一面もある。


 ◇ 紫音(しおん)女子高生 ◇

常に脅えている。魔亜沙のやった犯罪を覚えていて、誰かに知らせたいが、怖くてそれもできない。たぶん罪の意識が生みだした人格であろう。


 ◆ 七海(ななみ)三歳 ◆

三年前に侑子が死産した赤ん坊が成長して生まれた人格である。我が子の死を受け入れられない母親の侑子が、心の中で再生した子ども。無邪気な三歳児。


◇ 伊達尚樹(だて なおき)三十代半ば ◇

無理心中に失敗して、魔亜沙に殺されてしまった夫の尚樹を、心の中で再生して新しい人格として創りあげた。尚樹とそっくりな声を出して、表面上、彼が生きているように芝居をしていた。妻たちの行動を見ていて、陰で彼女たちをコントロールしているようである。



 みんなで七人の人格が存在していた。伊達侑子、君は『七色なないろの心』を持つ人だったのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る